【NBA】36歳のビラップスがクリッパーズに欠かせないワケ

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi
  • photo by AFLO

ロサンセルス・クリッパーズを陰で支えている36歳の大ベテラン、チャンシー・ビラップスロサンセルス・クリッパーズを陰で支えている36歳の大ベテラン、チャンシー・ビラップス 好調だった昨シーズン以上のペースで勝ち星を積み重ねているロサンゼルス・クリッパーズ(39勝17敗)。現在、イースタン・カンファレンスで3位に付けており、所属するパシフィック・ディビジョンでは同じロサンゼルスを拠点とする名門レイカーズ(25勝29敗)に追随させぬ勢いで、地区首位を独走している。この強さの要因とはいったい何なのか? 今回の『佐古賢一のカットインNBA』では、優勝候補に挙げられているクリッパーズについて話を聞いた。

 昨シーズンからイチオシしているクリッパーズが、いよいよ今シーズン、優勝しそうな勢いです。昨シーズンはクリス・ポールを加えたことで、選手の役割分担がより明確となり、プレイオフにも進むことができました。しかし、シーズン終盤を振り返ってみると、C・ポールやブレイク・グリフィンら主力選手に負担がかかり過ぎていたように思います。一方、今シーズンは、マット・バーンズやジャマール・クロフォードらを加えたことで、セカンドユニットが非常に充実しました。それにより、C・ポールやグリフィンの出場時間を減らしても、高い勝率を維持できています。このように、いろんな選手の組み合わせを増やせたことが、今シーズンの強さにつながっているのではないでしょうか。

 バスケットでいう「強さ」というのは、単に「1試合で140点や150点を獲れるようなチーム」ではありません。試合の安定感はもちろんのこと、チームが負けるときも、「相手とどのぐらい僅差で勝負できたか」が問われるのです。バスケットの面白いところは、試合終盤まで僅差で競っていると、最後の残り1分でどちらに流れが傾くのか、ガラッと変わるところなんです。土壇場になって表(勝ち)が裏(負け)になったり、その逆もあったり、本当に展開が読めません。今のクリッパーズが目指しているものは、最後の最後に「どうやって裏を表にして逃げ切るか」という試合運びでしょう。そうして見てみると、クリッパーズはその勝ちパターンを構築しつつあるので、本気で優勝を狙えるチームになったと思います。

 今シーズン、クリッパーズがその「強さ」を手に入れられたのは、間違いなく、今年で36歳を迎えたチャンシー・ビラップスの存在によります。今オフのクリッパーズは、優勝を狙うためにセカンドユニットを充実させました。もちろんその中には、他のチームならもっと試合に出られるレベルの選手も多くいます。すると、どうなるか。レベルの高い選手が集まると、一番問題となるのが「我(が)」の存在なんです。長いシーズンを一緒に戦っていると、どうしても我を主張したくなるケースが増えてきます。

 たとえばC・ポールとグリフィンが反目するようなことになれば、チームはすぐに崩壊してしまうでしょう。しかし、言い争いになりそうなときにビラップスが出てきて仲裁すると、誰も文句を言い返せません。なぜならば、ビラップスはデトロイト・ピストンズ時代に優勝を経験し、周囲からの信頼も厚い大ベテランだからです。やはり、チャンピオンリングを持っているということは、相手を説得する上で非常に大きいと思います。ビラップスがひとり存在するだけで、チームの不協和音を未然に防ぐことができるのです。

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