フロリダ在住、大坂なおみ。全米OP覇者を倒した17歳

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

2月特集 2015年躍動するホープたち(9)

 2014年7月28日――。アメリカ・カリフォルニア州の著名な大学街、スタンフォード発信の衝撃的なニュースがテニスファンや関係者たちの間を駆け抜けた。2011年の全米オープンチャンピオンにして、当時世界ランキング19位のサマンサ・ストーサー(オーストラリア)が、無名の16歳に敗れたというのである。 スコアは4−6、7−6、7−5の大接戦。しかも、第2セットはマッチポイントを手にし、第3セットでも先にブレークし先行しながらの敗戦だった。

ハイチ出身のアメリカ人を父に持つ大阪生まれの大坂なおみハイチ出身のアメリカ人を父に持つ大阪生まれの大坂なおみ 16歳の勝者の名は、大坂なおみ。国籍は日本。彼女にとって、ストーサーとの一戦はWTAツアーのデビュー戦であった。当時世界ランキング406位の大坂は、スタンフォード大会(バンク・オブ・ウェスト・クラシック)の予選に出場すると、元トップ50のペトラ・マルティッチ(クロアチア)らを破って本戦へ。そして迎えた自身初のツアー本戦初戦では、3年前の全米オープンで世界1位のセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)を下して優勝したベテランのストーサーと相まみえたのである。

 失うモノのない強み......と言ってしまえば、それまでかもしれない。だが、そのようなメンタルの持ち様で差を埋めるには、14歳の年齢差(すなわち経験の差/ストーサーは当時30歳)と、387位のランキングの開きは、あまりに大きい。それでもコートに足を踏み入れた時、大坂の身体を満たした想いはひたすらに、「勝つぞ、勝つぞ、勝つぞ!」であった。さらには驚くべきことに、この16歳はファンを味方につける秘策までも胸に抱いていたという。

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