検索

【F1】角田裕毅の苦戦の裏側「決して腐っているわけじゃない。努力が実を結ぶ日が来る」ホンダ・折原伸太郎が語る (2ページ目)

  • 熱田 護●インタビュー・撮影 interview&photo by Atsuta Mamoru
  • 川原田 剛●構成 text by Kawarada Tsuyoshi

【角田裕毅はマシンに自信を持てない状況か】

ーーローソン選手は開幕2戦で結果を出せず、第3戦の日本GPからフェルスタッペン選手の新たなチームメイトとして角田裕毅選手がレッドブルのマシンに乗ることになりました。角田選手の第一印象はどうでしたか?

 日本GPでホンダがサポートする日本人選手がトップチームのレッドブルに乗るというのはすごく感慨深い瞬間でした。実際に鈴鹿サーキットを走り始めると、角田選手のタイムの出方は悪くなかったですよね。予選では少し苦労していましたが、いいタイムの出し方をしていましたので、これはいけるんじゃないかなと期待感を持ちました。

ーーただ現在に至るまでなかなか期待した走りができていないというのが現実だと思います。不運なアクシデントがあったり、マシンのアップデートが思うように進まなかったりといろいろ状況が重なっていますが、ローソン選手と同じような結果に終わったレースもありました。一方で、フェルスタッペン選手は2024年までと比べるとたしかに苦戦はしていますが、予選でポールポジションを獲得したり、何度か勝ったりしています。角田選手とのパフォーマンスの差はどこから生まれているのでしょうか?

 私もわからないというのが正直なところです。角田選手は、レッドブルでのデビュー戦となった日本GPは12位で入賞はできませんでしたが、タイムの出方がすごくよかった。次のバーレーンGP(予選Q3進出・決勝9位入賞)とサウジアラビアGP(予選8位)も調子がよかった。いい形でレッドブルでのスタートをきれたので、ここまで苦戦するとは予想していませんでした。

 その原因がどこにあるのか、同じガレージにいて無線も聞いていますが、わからないです。ローソン選手の時と同じ答えになってしまいますが、クルマが自分のイメージどおりになっていないのはわかりますが、何が原因でそうなっているのかはわかりません。

 ただ昨シーズンまでの角田選手はいいタイムを出すまでにそれほど時間がかからなかったですよね。パッと乗って、すぐにいいタイムが出た。たとえば、急に雨が降ってきてコンディションが変わってもポンとタイムを出していましたが、そういう場面が少なくなっています。やっぱりマシンに対する自信を持てないということが影響しているのかもしれません。

レッドブルのPUに関するチーフエンジニアを担うホンダF1の折原伸太郎・トラックサイドゼネラルマネージャー(右)レッドブルのPUに関するチーフエンジニアを担うホンダF1の折原伸太郎・トラックサイドゼネラルマネージャー(右)この記事に関連する写真を見る

ーー僕がコース脇で撮影していると、アルファタウリやレーシングブルズの時代には予選でコースのギリギリまで攻めて、「カッコいいじゃん。いいタイムが出ているな」と感じるシーンが何度もありました。そういう時には実際にいいタイムが出ていたのですが、最近の予選アタックでは明らかにコースのギリギリまで攻めていない。けっこうスペースを残しているんですよね。折原さんがおっしゃるようにマシンに対して自信が持てないのかもしれません。ただ、同じマシンに乗ったフェルスタッペン選手はポールポジションを獲ってくるわけです。

 フェルスタッペン選手が速いのは、やっぱりずっとレッドブルのマシンに乗っていることが大きいと思います。マシンは毎年モデルチェンジしますが、結局は延長線上で開発が行なわれています。多少おかしな挙動をしたとしても、フェルスタッペン選手にとっては想定の範囲内ということで済んでいる。

 角田選手はレーシングブルズからレッドブルへ移って違うマシンに乗って、その挙動に慣れていないのかもしれません。日本GPからレッドブルのマシンに乗り始め、まだ10戦ぐらいしかレースをしていません。マシンに対する自信度で言えば、フェルスタッペン選手とまったく違うはず。そのなかでトラブルやクラッシュなどで悪い流れになってしまうと、攻めきれない場面が増えているというのが私の想像ですね。

 でも角田選手は決して腐っているわけじゃなく、結果が出なくても担当エンジニアと遅くまでコミュニケーションを取って、少しでもクルマをよくしようと努力を続けています。そこはアルファタウリやレーシングブルズ時代と変わっていません。彼は結果が出ない時ほどエンジニアとよく話し込んで、次のレースに改善してきています。そこは今も継続しているので、きっとその努力が実を結ぶ日が来るのではないかと期待しています

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る