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【F1】角田裕毅がようやくスタート地点に立った フェルスタッペンという「怪物」とのタイム比較がついに始まる (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【角田にとって、とても大きな一歩】


 メキース代表も、ぶっつけ本番でマシンに適応してみせた角田を高く評価した。

「裕毅は見事にマシンに適応し、非常に強力な走りを見せてくれた。パフォーマンス的にも大きなステップを果たすことができた。本当にすばらしい仕事だったと思う」

 マシン仕様の差を換算すれば、フェルスタッペンとの実質的なタイム差が着実に縮まっていることは見えていた。

 しかし、結果という誰の目にも見える形にならない日々が続いていた。第7戦エミリアロマーニャGPの予選での不用意な大クラッシュから始まった負のスパイラルに、ようやく終止符を打つことができた。

「新型フロアとの差がどのくらいなのかは、何戦か前からデータ上で見てはいました。(見た目上の)リザルトでは大きな差になっていても、そのマシン差を踏まえたうえでマックスと自分の(純粋なドライバーとしての)タイム差を見れば、そんなに大きくないことはわかっていた。

 エンジニアたちと進めてきた改善すべき方向性が正しいということもわかっていました。だけど実際に、それを結果で示せたのがよかったと思います」

 フェルスタッペン車からわずか1戦遅れでフロアを完成させて、タイトな時間のなかでマシンに組み込んでメカニックたちと、あくまでデータ上でしか把握できない性能に合わせ、最適なセットアップを導き出したエンジニアたち。そして、結果につなげた角田自身。彼らにとって、これはとても大きな一歩だったと言える。

 ただし、まだスタート地点に立ったにすぎない。

 これからフロントウイングもフェルスタッペンと同じ仕様へと進化すれば、マシンの差は完全になくなり、あとはドライバーの差だけがラップタイムで比較されることになる。そのフェルスタッペンという「怪物」との差を縮め、戦っていくことが本来の挑戦だったはずだ。

 決勝ではほんのわずかなボタンのかけ違いで、入賞を果たすことができなかった。

 だが、そのことにフラストレーションを爆発させている場合ではないだろう。予選結果に喜んだり、決勝結果に苛立ったりしている場合でもないだろう。

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