ホンダがホンダであるために「やる、辞めるの繰り返しじゃダメなんです」...2026年再始動に向けて「心が動く」要素は揃った (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【ライバルが続々とF1参入予定】

 若い技術者たちは、F1撤退にともなってホンダのさまざまな部署へと散り、カーボンニュートラル時代に向けた新しいモビリティの開発に当たっている。しかし、従来の約半数のスタッフがHRC Sakuraに残り、今も現行パワーユニットのオペレーションや信頼性対策、そして2026年に向けた基礎研究開発に従事している。

「異動して1年経って様子を聞くと、HRC Sakuraにいた人たちは『スピード感が全然違う』と言いますね。それが、それぞれの分野でやっていた人たちにも相当刺激になっているようです。

 やはりレースは相手が待ってくれませんから。決断しなければいけない時に決断するとか、時間軸の感覚が全然違うんですよね。有耶無耶にして過ごせませんし、否応なしに決断を迫られますので。

 失敗したら失敗したで皆にわかるように失敗するから、その場にいられなくなるかもしれないし。そうやって淘汰されて、優秀な人が残ってきたんじゃないですかね」(浅木)

 その間もHRCの作ったパワーユニットは勝ち続け、さらにF1の世界的な人気高騰でF1の市場価値が増大し、ホンダと同様に電動技術でカーボンニュートラル時代に立ち向かおうとしているアウディ、フォード、そしてキャデラックなども続々とF1参入を打ち出してきた。

 2026年に向けて、ホンダの心が動く要素は揃ってきている。

「みんな『ホンダ』という一人称で語りますけど、結局のところホンダというのは人の集合体だから、実際には『これがホンダ』というひとつの人格なんてない。そのなかでみんなの気持ちがどう動くかということで、この先の方向性が決まっていくでしょう。

 HRC Sakuraの人間は、結果でその人々の気持ちを変えるという仕事があるんだと思っています。そういう思いで技術者たちはやっていますし、実際にこの2年でずいぶん気持ちを変えてきたとも思います」

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