20歳の岩佐歩夢がF1直下カテゴリーF2で初優勝。覚醒した走りは、角田裕毅でも見ることがなかった圧倒的な速さ (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Getty Images

2020年はフランスF4王座獲得

 極めて激しいバトルが繰り広げられるF2のなかで、理論と実践の両方ができるのが岩佐の強みだ。決して理論派の頭でっかちでもなく、感覚だけに頼ったドライビングでもない。

 シーズン序盤はプッシュしすぎて余裕が持てず、自分の課題に真剣に取り組むがあまり、視野が狭くなっていた。そのせいで新たに直面する課題にうまく対処できないこともあった。

「ひとつ気づいていたのは、毎回レース週末で大きな課題が出るなかで、ひとつの問題にフォーカスしすぎていたところがあって、違うミスに対して早急に対応できないところがあったということです。過去のミスは振り返って対策はしますけど、レース週末に入ったらそこに集中しすぎず、また新たに出てくるミスや問題にすぐに対応できるような姿勢を持っておくことが重要だと、チームとのミーティングでも話をしました」

 1周目にトップに立った岩佐が考えたのは、ピットストップに向けてギャップを作って置かなければならないということだ。

 これまでピットストップのミスで優勝を逃したこともあり、チームクルーに余計なプレッシャーはかけたくないからだ。「完璧じゃなくていい。普通にコンスタントにできればいいんです」と岩佐は言う。

 アウトラップのタイヤの温まりとペースがよくないことが課題であることもわかっていた。だからこそ、ピットストップを前にマージンを持っておく必要があったのだ。

 1周目のセーフティカーが解除される瞬間に向けて、リスタートそのものとその直後のプッシュが可能なように照準を絞り、岩佐はタイヤ温度を温めていた。

 2年前にフランスF4に参戦してチャンピオンとなった岩佐にとって、ポール・リカールは勝手知ったるサーキット。リスタートもターン12から早々にスロットルを踏んで、一気にドゥーハンを1秒以上引き離してみせた。

「セーフティカー走行中にタイヤ温度をうまく管理できていたのが大きかったと思います。セーフティカー(解除)後にギャップを一気に広げることを最初の課題として組み立てて、リスタートの瞬間とその後のプッシュに重点を置いて(それができるようにタイヤを温めて)いました。

 改善してきているとはいえ、これまで自分のアウトラップがあまりよくないのは感じていたので、(ピットストップに向けて)ギャップを作っておきたいなと思っていました。なので、ソフトタイヤを使いすぎるくらいにプッシュしていこうと思っていたんです」

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