参戦5年目、レッドブル・ホンダ誕生。トップの座を奪った瞬間、大観衆は地鳴りのような歓声を上げた (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【勝利の立役者が表彰台に】

 チームの地元レースでもあり、「行けるところまで行きたい」というのはレース週末前からの要望だった。それに応えるかたちで、ホンダ側からこのパワーアップを提案したという。

 残り4周、フェルスタッペンはターン3でインをうかがうが、ルクレールもDRS(※)を使って必死に抜き返す。そして翌周、今度はインに飛び込んでルクレールを押し出すようなかたちで首位を奪い取り、オレンジ色に染まった大観衆は地鳴りのような歓声を上げた。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 フェルスタッペンはそのままトップでチェッカードフラッグを受け、ホンダはついにF1に復帰してから5年目にして初の勝利を掴み獲った。

「第1スティントは1周目に作ってしまったフラットスポットのせいで少し制約があったけど、それでもあれだけ長くステイアウトして引っ張ることができたし、タイヤ交換後の出だしのペースもすごくよかったと思う。

 その後は少しタイヤをいたわって抑えて走って、最後に1台ずつ前のクルマを抜いて行ったんだ。そこからのクルマはものすごく生き生きとしていたね。7位から追い上げて勝ったのもうれしいけど、今回は特にホンダとの初勝利だし、彼らのためにうれしいね」(フェルスタッペン)

 リアルタイムでデータを監視し運用しているHRD Sakuraも、歓喜に包まれた。

「感動しましたね、泣いている奴もいました。私は、涙は出なかったけどホッとしたというか、自分の責任は果たせたなと思いました。技術者たちに勝ちを味わせる必要があると思っていましたから」(浅木泰昭開発責任者)

 表彰台には優勝コンストラクターの代表として田辺テクニカルディレクターが上げられ、この勝利を掴み獲った立役者が誰であったのかをはっきりと表わしていた。

「このプロジェクトを始めた人たち、ここまで関わってきた人たち、私は去年からですけど、それ以前はパワーユニットを載せてもエンジンがかからない、電気の調子がおかしい、徹夜をしてようやく走らせたら壊れる、交換してもまた壊れる......そんな日々を過ごした人たちが、自分たちの技術を信じてここまでやってきてくれたからこそ、今があります」(田辺テクニカルディレクター)

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