参戦5年目、レッドブル・ホンダ誕生。トップの座を奪った瞬間、大観衆は地鳴りのような歓声を上げた (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【残り5周、ルクレールとの死闘】

 そんな異例のコンディションでメルセデスAMGが苦戦を強いられるなか、ホンダRA619Hのスペック2は快調な走りを見せる。フェルスタッペンは予選で3位に入り、予選2位のハミルトンが走路妨害ペナルティを科されたことでフロントロウスタートを得た。

 ところがブラックアウトの瞬間、「クラッチのセッティングを攻めすぎた」フェルスタッペンはアンチストールモードに入って出遅れ、7位まで後退してしまった。さらにはバトルのなかでフラットスポットを作ってしまい、我慢のレースを強いられる。

 しかし、レッドブルとフェルスタッペンは自分たちのペースに自信があった。だからレース後半に勝負を賭け、ライバルたちよりも10周も長く引っ張り、フレッシュなタイヤで猛追する戦略に出た。

 ピットストップを終えた段階でフェルスタッペンは4位。ここからフェラーリのセバスチャン・ベッテル、メルセデスAMGのバルテリ・ボッタス、そしてポールトゥウインで初優勝を目指すシャルル・ルクレール(フェラーリ)を追いかけていく。

 ベッテルとボッタスは為す術なく、フェルスタッペンに抜かれていく。そして残り5周、ついにルクレールとの死闘へ。

「エンジン11、ポジション5」

 フェルスタッペンにはパワーを絞り出すための指示が飛び、さらにその数周後には「ポジション7」まで引き上げられた。石橋を叩いて渡る田辺テクニカルディレクターも、この勝負どころで徹底的な攻めの姿勢をとった。

「エンジンライフのなかでやりくりをしました。ちょっと(ライフを)前借りしたようなかたちです。どこかで返しますからって感じで(苦笑)。最後は行くしかないんで。

 勝利が見えると言うか、4秒差でしたから追いかけるしかないですからね。そこで手を緩める必要なんてどこにもないし、トップに行くまで(エンジンパワーを)使いきろうと、最後のひと押しというかたちで最大のパフォーマンスを出せる使い方をしました」

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