参戦5年目、レッドブル・ホンダ誕生。トップの座を奪った瞬間、大観衆は地鳴りのような歓声を上げた (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【勝つためには運が必要だ】

 8戦を戦って、表彰台はわずか2回。2019年のレッドブル・ホンダは、決して順調な船出を切ったわけではなかった。

「僕は4位になるためにレースをしているわけじゃないし、もちろん勝ちたい。いつも4位を走っていて、もう一歩で表彰台を逃すのもキツいしね。常にフェラーリかメルセデスAMGが前で争っている。

 そんなに大きく遅れをとっているわけじゃない。ポールリカールでは明らかにトップスピードが足りていなかったけど、メルセデスAMGと比べて2つか3つのコーナでのコーナリングスピードを欠いていた。表彰台に乗りたければ、車体側もエンジン側ももっとパフォーマンスの向上が必要なんだ」

 1年前にチームの地元レッドブルリンクで優勝を挙げたマックス・フェルスタッペンは、2019年のこのマシン状況では「勝つためにはかなり運が必要だろう」と悲観的だった。

 しかし、1週間前のフランスGPでホンダはスペック2へとアップデートを果たし、ホンダジェットの技術を採り入れたターボチャージャーを投入した。

「オールホンダでさまざまな技術を投入しようとトライしてきたなかで、ひとつ大きな成果として、ターボチャージャー部分に航空機エンジン開発部門(ホンダジェット)の技術を入れてターボ効率アップを図ることができました。

 部品が無数にあるなか、コア技術としてホンダジェットの技術を入れ、IHIさんと共同開発して作ってもらったターボのなかにホンダの技術を入れた。ターボの効率が上がった分、MGU-HもICEも生かせるようになる。そのバランスを取ることで、パワーユニット全体としての性能向上を果たしています」(田辺テクニカルディレクター)

 フランスでは熱の問題もあってやや抑えた使用にとどめたが、そのデータをしっかりと生かしてオーストリアGPに臨んだ。山間部にあるレッドブルリンクにしては珍しく、気温は34度と予想外の暑さ。そして標高700メートルの"プチ高地"ゆえに空気が薄く、冷却は厳しい。エンジンの吸気も薄くなるため、ターボに求められる仕事量も増える。

3 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る