外国人記者が今季F1のトップ争いを分析。「現在の最強はフェラーリ」 (4ページ目)

  • サム・コリンズ●取材・文 text by Sam Collins
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 一方、来季のメルセデスが新しいコンセプトを採用するのであれば、従来とは異なるマシン開発と熟成に多くのリソースと時間を割く必要が出てくるが、ここで頭が痛いのは、2021年にはまったく新しいテクニカルレギュレーションの導入が予定されていることだ。2020年のマシンで新コンセプトに挑みつつ、それと並行して、規定が大きく異なる2021年用マシンの開発を同時に進めるのは容易ではなく、メルセデスは難しい判断を迫られることになるはずだ。

 もちろんフェラーリも厳しい選択に迫られている。だがそれは、マシン面というよりもむしろ、ドライバーに関することだ。チームのエースドライバーはセバスチャン・ベッテルだが、今年は年下のチームメイト、シャルル・ルクレールのほうが、ほとんどのコースで、4度の世界タイトルを獲得したベッテルを凌駕するパフォーマンスを発揮しているのだ。

 現在のドライバーズランキングではルクレールが3位につけており、ベッテルはその後方の5位である。ルクレールのパフォーマンスは明らかにベッテルに対して心理的なプレッシャーを与えており、それがロシアGPでの不要なミスにつながった。一方、ルクレールもまたミスを犯しているが、彼の場合はむしろ若さに起因するものだ。

 このふたりの間に発生した確執を、フェラーリはなんとしてでもうまくコントロールしなければならない。シンガポールでは、ベッテルをルクレールの前に出すという戦略を採用したが、ルクレールは明らかに不満げだった。続くロシアでも、ベッテルがルクレールの思惑を顧みずに、序盤でルクレールにトップを譲るという、チームオーダーを無視した格好になり、彼らふたりの間に怒りと混乱が発生した。

 鈴鹿以降のシーズン終盤戦では、このふたりのバトルはさらに熾烈になるだろう。ランキングをかけた争いではない。2020年のフェラーリはどちらがエースなのか、という意地がぶつかりあう勝負だ。後味がよくない戦いになるかもしれないが、これが2020年のタイトル争いになる可能性もある。その争いの手綱をフェラーリがどうさばくか、というのも見どころだ。もちろん、もしそこを誤れば、メルセデスは間違いなくその隙につけいってくるはずである。(西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira)

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