ディクソンが王者でインディは幕。佐藤琢磨は現チームで来季に挑む (2ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 3段階ある予選のファイナルにはキッチリ駒を進めたものの、インサイダーとしてハンター‐レイの速さを知っているロッシは、"何かをしなければ"と焦ったようで、ファイナルではブラックタイヤ投入という失敗を冒した。レッドタイヤでの一発勝負で敵わないなら、ブラックでの連続周回に活路を......という考え方は外れた。

 対するディクソンは予選2位。スタート直後の混乱にも巻き込まれにくいフロントロウを手にし、有利な状況をさらに確かなものにした。ただ、ポールポジション獲得によるボーナス1点を惜しくも獲り逃したのが、ロッシにとって救いだった。

 快晴の決勝日、ソノマには多くのファンが集まった。雲ひとつない空に、「スタート・ユア・エンジンズ!」のアナウンスが威勢よく響き渡った。声の主はベイエリア出身のヒップ・ホップ・スター、MC・ハマー。ポルシェフリークでもあるハマーは、地元のプロスポーツを長年にわたって熱烈にサポートしており、今年のチャンピオン争いの盛り上げにひと役買った。

 スターティンググリッドでは上位陣のほぼ全車が予選で使ったレッドタイヤを選んでおり、ルールをフル活用し、最も負担のかかる左リヤのみ新品を装着していた。それに対して、6番手のロッシだけが光沢を放つ新品レッドを履いていた。それは、スタートで一気に順位を上げるという意思の表われというより、初タイトルのチャンスに対して焦る気持ちが大きくなったように映った。

 ハンター‐レイはポールポジションからレースをリード。おそらくロッシが2位に浮上したとしても、先輩チームメイトは道を譲ることをしなかっただろう。ロッシとしても、堂々と戦って勝ち、タイトルを獲得したかったはずだ。しかし、そのような展開にはならなかった。ハンター‐レイは85周のレースのうち80周をリードして、完全勝利を記録した。

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