エアレース第5戦でまさかの大惨敗。室屋義秀の心身に何が起きたのか (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 だが、そんな傲慢さの芽生えをうかがわせる一方で、室屋はまた、予選のタイムが伸びなかったことについて、こんなことも話している。

「無意識にほんのちょっと力が入ってしまい、(旋回のときに機体を)振り過ぎてしまう。振ったほうがゲートの角度が楽になり、(パイロンヒットの確率が低くなって)安全なので、自分ではそんなつもりはなくても、どこかで安全にゲートに入ろうとする意識が働く。だから、(操縦桿を操作する)腕に力が入って動かし過ぎてしまうんだと思う」

 今度は傲慢さとは対照的な、いわば、守りに入ってしまう消極性である。

 チャンピオンシップポイントランキングでトップに立ち、目標だった年間総合優勝が現実味を帯びてくるにつれ、少なからず現在の立場を守りたいという気持ちが生まれてしまうのだろう。チャレンジャーとして果敢に勝負していく姿勢が薄れ、守りに入ってしまったのでは、室屋らしさが半減してしまうにもかかわらず、だ。

 いずれにしても、13位という結果以上に、"らしさ"が失われていることが気になった。

 誰が相手であろうと、負けることなど想像できないほど、次々に対戦相手をねじ伏せる。そんな圧倒的な強さで頂点に立ったアメリカ・サンディエゴでの第2戦をピークに、室屋の強さを支えていた心身の歯車は、少しずつ狂いが生じていたのだろう。

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