エアレース第5戦でまさかの大惨敗。室屋義秀の心身に何が起きたのか

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 室屋義秀のなかでうまく回っていた心身の歯車は、ずいぶん前から、少しずつ狂い始めていたのだろう。

 レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ第5戦。ロシアで初めてレッドブル・エアレースが開かれた歴史的な一戦で、室屋はブービーの13位に沈んだ。

今季2度目の0ポイントに終わった室屋今季2度目の0ポイントに終わった室屋 今季に入り、第2、3戦で連勝し、チャンピオンシップポイントランキング(年間総合順位)でもトップに立っていた室屋からは、考えられない惨敗である。

 これにより、室屋はチャンピオンシップポイントランキングでも、第5戦を制したカービー・チャンブリスにトップの座を譲り、2位に後退。1位から4位までがわずか2ポイント差のなかにひしめく、大混戦に飲み込まれてしまう結果となった。

 こんな――あまりに脆く、あまりに弱い――室屋を見るのは、久しぶりのことだ。

 今回と同じラウンド・オブ・14での敗退は、今季開幕戦でもあったことだが、当時は明らかなエンジンの不調という問題を抱えており、それを考えればやむを得ない結果だった。もちろん、エンジントラブル自体をミスと指摘することは可能だろうが、ことパイロットに関していえば、むしろ"負けてなお強し"を印象づけた開幕戦だったと言ってもいい。

 ところが、今回の第5戦はまったくいいところがないまま、あっけなく敗れ去った印象しか残っていない。少なくとも今季の室屋には、まったく見られなかった姿である。

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