エアレース第5戦でまさかの大惨敗。室屋義秀の心身に何が起きたのか (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by red bull

 なるほど、これでは好結果を期待するのは難しい。考えられない惨敗にも同情の余地はある。

 しかし、本来の(徹底してメンタルトレーニングを重ねた)室屋であれば、こうした状況に直面したとしても、「無理をせず、今できる範囲内のフライトに徹しよう」と、割り切ってレースに臨むことができたはずだ。

 ところが、実際の室屋は「レースに集中できなかった」結果、風向きの変化に対応できずにパイロンヒットしてしまうと、焦りから「少しでもタイムを縮めようとして」、さらにインコレクトレベルのペナルティを犯す失態を演じてしまったのである。

 レースに集中できなかったことは仕方がないとしても、焦りから平常心を失ってしまったのでは、もはや勝ち目はない。自滅に近い形で敗れ去る姿は、およそ(少なくとも最近の)室屋らしくなかった。

 また、前日の予選を終えたとき、室屋がこんな話をしていたのも気になった。

「初日の公式練習のときに、(頭抜けたトップタイムを記録して)今回のレースは簡単だなって思ってしまった。周りもよく見えていたし、負ける気がしないというか......、そんな感じがあって、なんかそこからおかしくなってきた」

 今季第2戦から第4戦まで自身初となる3戦連続の表彰台に立ったことで、室屋のなかに、知らず知らずのうちに驕(おご)りが生まれていたのかもしれない。室屋自身、そんな自分に気づき、恐れを抱き始めていたのである。

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