ファンの熱狂も後押し。まさかの連続で室屋義秀がエアレース千葉を連覇。 (4ページ目)
室屋は、フライト時の感覚を通して「自分のコンディションがいい状態でキープできていないのが分かった」と語る。
「何が原因かは分からないが、完璧に近い感じだった(優勝した第2戦の)サンディエゴの時のほうが、フライトのクオリティはずっとよかった」
室屋は自身の不調の原因を、決して地元開催ゆえのプレッシャーに押しつけるようなことはしなかった。だが、室屋を取り巻く熱狂が、少なからず彼の調子を狂わせた。そう考えるのが普通だろう。
だからこそ、「地元のレースで勝つのは難しい」。ハンネス・アルヒやナイジェル・ラムといった歴代の名パイロットでさえ、そう口にしていたゆえんである。
実際、レースが始まってみると、室屋はタイトロープを渡るような戦いが続いた。
ラウンド・オブ・14では、ペトル・コプシュタインと対戦し、わずか0.007秒という僅少差で勝利。ラウンド・オブ・8では、インコレクトレベル(ゲートを水平に通過しない)のペナルティを犯したものの、対戦相手のマット・ホールもまた、クライミング・イン・ザ・ゲート(ゲートを上昇しながら通過する)のペナルティを取られたことに救われ、辛くも勝利した。
そして、優勝をかけたファイナル4。室屋は他を圧倒するようなスーパーラップを出したわけではなかった。だが、年間総合優勝を争うライバルの、マティアス・ドルダラーがパイロンヒット(ゲートに当たる)したのに続き、マルティン・ソンカもインコレクトレベルのペナルティを犯し、室屋に後れをとった。
ソンカのペナルティに至っては、自ら「風の影響ではない。完全に自分のミス」と振り返るまさかのイージーミス。魔がさしたとしか思えないような、普通なら起こりえないフライトだった。
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