【エアレース】「PR部長」から「勝負師」へ。室屋義秀がついに初優勝 (5ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki

 ただし、室屋がこうした自信のコメントを口にするのは、これが初めてのことではない。言い方は悪いが、これまで何度も自信を持ってレースに臨みながら、(3位も負けとするならば)その都度負けてきた。現段階においては、いつになく周到な準備が室屋を初優勝に導いた、とするのは、結果論であるようにも感じる。

 加えて言えば、室屋は過去、ファイナル4に4度進出しているが、いずれもペナルティを犯したり、前のフライトからタイムを落としたりということが起き、初優勝を逃している。ラウンド・オブ・8まではすばらしいフライトを見せていても、最後のファイナル4で伸び悩み、逆にそこでタイムを縮めてくるポール・ボノム(イギリス/昨季限りで引退)や、マット・ホール(オーストラリア)の後塵を拝してきたのだ。

 今回の千葉のレースでも、最終的に2位に終わったマルティン・ソンカ(チェコ)が、ラウンド・オブ・8からファイナル4にかけてタイムを縮めてきたのに対し、室屋は逆に落としている。初優勝こそ手にしたものの、昨季から続く課題は解消されたわけではないのだ。

 ついに手にした初優勝。だが、涙の快挙も、室屋の目標のなかでは、ひとまず第一関門を突破したに過ぎない。室屋の周辺はただならぬ祝福ムードに包まれているが、今季はまだ5戦のレースを残している。

 この結果に満足することなくコンスタントに成績を残していかなければ、混戦のシーズンで年間総合の表彰台に立つのは難しい。地元のヒーローの勝利に沸く瞬間を目の当たりにさせられたライバルたちは、室屋の連勝を阻むべく、手ぐすね引いて待っているはずだ。

 今季第4戦は、7月16、17日のブダペスト(ハンガリー)。つかの間の歓喜に浸った後は、すぐに次なる戦いが控えている。

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