小林可夢偉が語る「F1と日本のスーパーフォーミュラの違い」 (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 しかし可夢偉は、だからこそ「チャレンジしがいがある」と言う。

 F1ではマシン性能とチーム力がものを言う。ドライバーは限られた範囲で最善を尽くす。言い方を換えると、マシン性能とチーム力に左右される部分が大きい。しかし、ワンメイク(車体は全チーム同じ、エンジンは同規定下でトヨタとホンダが開発)のSFでなら、ドライバーの力量次第で頂点を目指すことができる。

「ここ何年か、ドライバーの能力で戦う部分が少ないなかでレースをしてきた。だけど、スーパーフォーミュラでは自分の力で大きく変えられる部分があるから、そこでしっかりチャレンジをして、結果を残すっていうことをやりたいんです。たいへんなことですけど、それが1年目でできたら、意味のあるシーズンになるかなと思ってます」

 困難が待ち受けていることは覚悟している。F1経験者という自身の名に傷がつくこともあるかもしれない。しかし、それでも立ち向かうことを決めたのは、可夢偉が常に前を向き、上を目指す人間だからだ。

「今、自分がドライバーとしてピークにあるかどうかは、僕にも分からないです。でも、チャレンジしがいがあるかどうかで、まだまだ伸びていくもんやと思ってます」

 戦いの舞台をSFに移した2015年、可夢偉がどんな進化を見せてくれるのか楽しみにしたい。

profile
Kobayashi Kamui
1986年9月13日兵庫県生まれ。
1996年にカートレースデビュー。2001年にフォーミュラ・トヨタレーシングスクールのスカラシップ生に選出され、02年ヨーロッパカート選手権に参戦。
その後、フォーミュラトヨタ、フォーミュラルノーなどを経験し、06年からF3ユーロシリーズにステップアップ。
08年からF1直下のカテゴリーであるGP2に戦いの舞台を移すと、09年にはF1第16戦ブラジルGPにトヨタのドライバーとして参戦。
いきなり9位入賞の力走を見せると、続く第17戦アブダビGPでは6位を獲得。これが評価され、10年はザウバーのレギュラードライバーとしてフル参戦。
11年、12年はザウバーで活躍。12年日本GPでは3位表彰台を獲得した。
13年はF1シートを獲得できなかったが、14年はケータハムと契約。
15年はスーパーフォーミュラ参戦が決定している。

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