【F1】マシン開発は不調も、小林可夢偉が示したリーダーシップ (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 それでも、コースインする度にマシンが過熱してしまい、スピードを落として走ることすらできなかったレッドブルやトロロッソの深刻さに比べれば、ケータハムにはまだ救いがあった。レッドブルとルノーの技術系上級スタッフは、予定を前倒ししてイギリスのファクトリーへ戻ったのだが、実質的に、彼らはヘレスでのテストを断念したようなものだった。

 ルノーは2月18日から始まるバーレーン合同テストに向けて、ヘレスでのデータをもとに抜本的な対策を講じなければならない。だからこそ、最終日にルノー勢最多の54周を数えた可夢偉の走りは、ルノーにとって貴重なデータとなるだろう。

 1月21日のケータハム加入発表からわずか10日後のテストで、存在感を見せた可夢偉はこう話す。

「僕は『経験があるからチームを引っ張ってくれ』っていう役目でここに来ているんです。トニー(・フェルナンデス/チームオーナー)はケータハムというチームをなんとかしたくて、やる気があってチームのモチベーションを上げられるドライバーを必要としていたんです。『おまえの経験と勢いがあれば、なんとかなるだろう!』って(苦笑)。(シート争いが)おカネの勝負になっていたら全然勝負になってなかったですけど、僕は莫大な金額を持ち込まなくても“気持ち”で乗せてくれるトニーに出会えたということです」

 そして、ヘレスでの4日間のテストで、可夢偉はオーナーから求められているチームリーダーとしての役割を果たし、見事に期待に応えたのだ。

 現時点では、まず大きくリードしたメルセデス勢4チームだが、そのエンジン音を聞けば100%フルにマシン性能を引き出していないことは明らかだ。まだ他メーカーとの間に決定的な差が開いたとは言い切れないだろう。大きく出遅れたルノー勢4チームは対策を施し、失った時間の穴埋めをしなくてはいけない。また、フェラーリはともかく、同じフェラーリユーザーであるザウバーとマルシアも、とても順調とは言えない状況にある。

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