朝日杯FSで期待は「2歳GⅠ向きの血」で構成された一頭 好調のキズナ産駒も外せない (2ページ目)

  • 平出貴昭●文 text by Hiraide Takaaki

 ナムラフッカーの血統表を見ると、2歳GⅠ向きの血で構成されているのがよくわかる。スワーヴリチャードの父ハーツクライからはサリオス、ドウデュース(牡4歳)と2頭の朝日杯FS勝ち馬が出ていて、スワーヴリチャードと同じく母の父にアンブライドルズソングを持つダノンプラチナは朝日杯FS、コントレイルはGⅠホープフルSを勝利。さらに、ナムラフッカーの母の父ルーラーシップは昨年の勝ち馬ドルチェモア(牡3歳)の父で、祖母の父ティンバーカントリーは2001年の勝ち馬アドマイヤドンの父だ。

 ナムラフッカーの血統で興味深いのは配合で、曽祖母アイリッシュピースが父の父ハーツクライの全姉という血統から、ハーツクライ=アイリッシュピースの2×3という強烈なクロスを持っている。濃いめの牝馬クロスといえば、日本ではエルコンドルパサーなどが思い出されるが、なかなかGⅠ級が出ることはないので、普段からサラブレッドの配合に関する業務を行なっている筆者としては応援したい存在だ。

 もう1頭はジューンテイク(牡2歳、栗東・武英智厩舎)を推す。父はダービー馬キズナで、キズナは2歳GⅠ馬こそ出していないが、今年は2歳種牡馬リーディングでエピファネイアに続く2位に入っているように好調で、東京スポーツ杯2歳Sではシュバルツクーゲル(牡2歳)が2着、札幌2歳Sではギャンブルルーム(牡2歳)が3着に入っている。

 ジューンテイクの母の父はシンボリクリスエスで、この「父」と「母の父」の組み合わせは、GⅠエリザベス女王杯(阪神・芝2200m)を勝ったアカイイト、GⅠ安田記念(東京・芝1600m)を連覇し、GⅠヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)も勝ったソングライン(牝5歳)と2頭のGⅠ馬が出たニックスだ。

 ジューンテイクの曽祖母ツィンクルブライドはGⅠ桜花賞2着馬(阪神・芝1600m)で、その産駒ペールギュントは2004年のこのレースで1番人気に推されながら3着に敗れている。一族の無念を晴らす意味でも頑張ってほしい。

 以上、今年の朝日杯FSは、スワーヴリチャード産駒ナムラフッカー、キズナ産駒ジューンテイクの2頭に期待する。

プロフィール

  • 平出 貴昭

    平出 貴昭 (ひらいで・たかあき)

    主に血統分野を得意とする競馬ライター、編集者。(株)サラブレッド血統センター在籍。著書に『覚えておきたい日本の牝系100』『一から始める! サラブレッド血統入門』など。「週刊競馬ブック」で『血統見聞録』を連載するほか、「競馬四季報」などの編集業務にも携わる。そのほか、『優駿』などにも寄稿。twitterアカウント:@tpchiraide

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