ウマ娘でも描かれるライバル関係。オグリキャップVSバンブーメモリーなどマイルCSで生まれた数々の名勝負 (4ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Sankei Visual

 1度目の対決は、先述した1994年春の安田記念。ノースフライトが勝利し、サクラバクシンオーは4着だった。注目を集めたのは2度目の対戦。同年10月のGIIスワンS(阪神・芝1400m)である。ちょうど中間距離での対決であり、言い訳がつかない舞台だったからだ。

 ここでは1番人気に推されたサクラバクシンオーが勝利したが、スプリント王者はさらにもう一度、マイルの舞台で宿敵との対戦を望んだ。それが1994年のマイルCSだったのである。ノースフライトは、このレースでの引退を発表。文字通り最後の対決となった。

 前走とは異なり、ファンはノースフライトを1.7倍の1番人気に支持。マイル女王に対する敬意だろう。サクラバクシンオーへの期待も高く、3.3倍の2番人気。3番人気のフジノマッケンオーは11.4倍と大きく離されたことから、完全な2頭の一騎打ちムードだった。

 レースでは"サクラ軍団"の代名詞であるピンクの勝負服が前へ。ノースフライトはその直後をマークする。勝負どころでは、まるで距離不安を気にしないかのようにサクラバクシンオーが早々と先頭を奪った。

 ただ、ここではマイル女王が譲らなかった。一気に外からライバルを交わすと、しっかりと抜け出して完勝。サクラバクシンオーは最後フジノマッケンオーに迫られたが、クビ差で2着を確保した。

 マイルでは負けられないノースフライトの美しさ。かたや、守りに入らず真っ向勝負で戦ったサクラバクシンオーの気高さ。いつの時代も、競馬とはこうあってほしいと思うようなライバル対決だった。

 なお、サクラバクシンオーはこの後にGⅠスプリンターズS(中山・芝1200m)を完勝。こちらも引退を表明し、有終の美を飾った。

 本命馬の圧勝や度肝を呼ぶ波乱も競馬の魅力だが、やはりライバル同士の一騎打ちは心を熱くする。今年もそんなレースが見られるか。週末のマイルCSを楽しみにしたい。

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