武豊が9度目の凱旋門賞へ。勝利への執念を見せる挑戦の軌跡 (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Sankei Visual

 現在、日本の競馬関係者やファンにとっても、凱旋門賞への憧れは格段に大きなものになっている。数ある歴史的な海外レースの中でもそう認識されるようになったのは、武騎手の挑戦の歴史によってもたらされたものとも言える。

 そして今年は、アイルランドの名門、A.オブライエン調教師が管理するジャパンで挑む。同馬は昨年の英インターナショナルSを勝利し、凱旋門賞では4着と好走した。しかし、今年は4戦して勝利どころか2着もない。前走の愛チャンピオンSも、一旦は伸びかけながら、最後は失速して5着に敗れた。さらに相手が強力になる凱旋門賞では苦戦が予想されている。

 さらに新型コロナウイルスの影響で、日本でも海外からの入国に際してPCR検査が義務づけられている。陽性であればそのまま隔離措置。陰性でも14日間の自宅待機が要請されている。つまり凱旋門賞に参戦すれば、帰国後に短くとも2週間、日本での競馬を休まなければならない。

 それでも武騎手は騎乗オファーを受け、参戦を決断した。武騎手本人にとっても、それだけの思いと覚悟、価値が凱旋門賞にあるからに他ならない。

 苦戦が予想されているのは、サガシティで参戦した2001年も同じ。騎手リーディング首位から陥落して久しく、衰えも指摘されたこともあったが、近年は再び勝利を積み重ねて唯一無二の存在感を取り戻してきている。

 逆境に立たされたときほど燃え上がる男が、凱旋門賞という舞台でジャパンに乗り、どんな競馬を見せてくれるのか。楽しみは尽きない。

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