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平成競馬の衝撃。ディープインパクトは
新たなヒーロー像を生み出した

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

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平成スポーツ名場面PLAYBACK~マイ・ベストシーン 
【2004年~2006年 競馬 ディープインパクト】

歓喜、驚愕、落胆、失意、怒号、狂乱、感動......。いいことも悪いことも、さまざまな出来事があった平成のスポーツシーン。現場で取材をしたライター、ジャーナリストが、いまも強烈に印象に残っている名場面を振り返る――。

 平成の競馬の最初の主役は、オグリキャップだった。

 元号が昭和から平成に変わった1989年は、このオグリキャップを中心に、イナリワンとスーパークリークが勝ったり、負けたりを繰り返し「平成の三強」と呼ばれた。

 そして翌1990年(平成2年)には、競馬史に刻まれる、有馬記念でのオグリキャップの劇的な復活劇があった。その"感動のラストラン"は、今なお語り継がれる伝説だ。

 平成の競馬はまさに異様な盛り上がりのなか、幕を開けたのである。

 その後も、名馬は続々と誕生した。

 史上5頭目の三冠馬ナリタブライン、悲運の快速馬サイレンススズカ、凱旋門賞2着惜敗のエルコンドルパサー、史上最多記録に並ぶGI7勝馬テイエムオペラオー、NHKマイルCと日本ダービーの変則二冠を達成したキングカメハメハ、史上7頭目の三冠馬オルフェーヴル......。

 また、64年ぶりに牝馬でダービーを制したウオッカや、その好敵手ダイワスカーレット、さらに「怪物」オルフェーヴルをジャパンCで撃破したジェンティルドンナなど、競馬界の常識を次々に覆してきた名牝も数多く登場した。

 そんななか、「平成を代表する1頭は?」と問われたなら、躊躇なくディープインパクトの名前を挙げる。

 2004年(平成16年)~2006年(平成18年)の現役生活で、国内通算13戦12勝(2着1回)。史上6頭目の三冠馬である。しかも、過去にはシンボリルドルフ一頭しかいない、無敗の三冠馬となった。

 父はアメリカ競馬史にもその名を刻む、米二冠馬のサンデーサイレンス。母ウインドインハーヘアも、欧州に活躍馬が数多くいる名門の出で、自身も英オークス2着という実績を持つ。

 ディープインパクトは、文句なしの良血馬である。その良血馬が、良血たる最高の走りを見せつけた。

 元来、競馬ファンは叩き上げの"感動物語"が好きだ。一方で、良血のまさに良血たるスーパーな走りにも夢を抱いている。その欲求を存分に満たしてくれたのが、ディープインパクトだった。

"アンチ良血"を自認する競馬ファンも、「ディープだけは違う」と称賛。彼らが持つ"潜在的な良血への期待"をも覚醒させたのである。

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