記憶に残る名馬──。函館記念といえば思い出す、サッカーボーイ (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • 日刊スポーツ/アフロ●写真 photo by Nikkan sports/AFLO

 前出のジョッキーが「肉を切らせて」というのは、この3コーナーから最後の直線を向くまでのシーンだ。そのジョッキーが言う。

「そこに来るだいぶ前から仕掛けているからね。あそこは馬には最もきついところだよ。それを、まったくペースを落とさずにまくっていった。まるで、『オレもきついよ。でも、あんたらはもっときついだろ』と言っているようにね。あれこそ"肉を切らせて"という勝ち方。よほど強い馬じゃなきゃできないことだよ。そんなすごいことを、事もなげにやってのけた。サッカーボーイというのは、本当に強い馬だった」

 キャリアの長い競馬ファンは、いまだに函館記念と言えば、サッカーボーイの名前を挙げる。それほど、あのパフォーマンスが強烈な印象として残っているからだ。

 サッカーボーイはこのあと、マイルCSを快勝。前述のように、年末の有馬記念(中山・芝2500m)出走を最後に、脚部不安によって引退した。

 ちなみに、このときの有馬記念を勝ったのは、あのオグリキャップ。タマモクロスとの激闘を演じた伝説のレースだ。サッカーボーイはレース前にゲートで暴れて、前歯を折るなどの流血騒ぎを起こしている。それでも、オグリキャップ、タマモクロスに次ぐ3着と奮闘した(3位入線のスーパークリークが失格し繰り上がり)。

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