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ヴィブロスでドバイターフを制した
「大魔神馬」。次はアメリカに照準 (3ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu


 レース当日は前日から断続的に降る雨によって、ドバイとしては珍しいぬかるんだ馬場となっていた。スタートは五分だったが、無理に前にはつけずに、9番枠から徐々に内へとポジションを移す。3コーナーに向けて長い向こう正面の直線では後方から数えて4番手あたりを追走したが、映像を見る限りでは行きっぷりが今ひとつで、時折、鞍上から気合をつけられているようにも見受けられた。たが、実はこれはモレイラ騎手の見事な判断によるものだった。

「向こう正面では向かい風が強かったので、他の馬の後ろにつけ、うまく風をやり過ごす形で追走しました」(モレイラ騎手)

 3~4コーナーでもまだまだ後方集団の一角。しかし、直線に向かう手前で、モレイラ騎手は目の前に一瞬ぽっかりと開いたインコースの空間を見逃さず、そこへとヴィブロスを導くと、コーナーワークで一気に前との差を縮めてみせる。さらに直線に向くと、今度は瞬時に切り替えて外へ外へとヴィブロスをいざなう。

「インから抜け出そうと思ったけど、どうも彼女が内ラチを嫌うようだったのと、馬場も今ひとつだと思ったので、彼女がストライドを大きく伸ばすことができる外へ切り替えました」(モレイラ騎手)

 ここからが圧巻だった。先に抜けたエシェム(牡4歳)と内で食い下がるリブチェスター(牡4歳)の外から迫るヴィブロス。じわじわと前に接近すると、場内から轟音のようなどよめきが上がる。そしてゴール前でエシェムをかわすと、そのまま半馬身差をつけてゴール。モレイラ騎手はゴール後、場内全体にも響き渡ろうかという声で雄叫びをあげた。

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