藤田菜七子騎手へ。「馬一頭一頭の個性や感情に触れる気持ちを大切に」 (4ページ目)

  • スポルティーバ編集部●構成 text by Sportiva  photo by Kyodo news

――今は海外の有名騎手が来日しますし、地方競馬の上位騎手も来て、新人騎手が騎乗馬を確保するのは大変ですよね。

「男性ジョッキーでも1勝も挙げることなく、やめてしまうケースもあります。今は(有力騎手には騎乗馬を手配する)エージェントもいますし、本当に新人は1鞍乗るのも難しい状況なんです。ただ、(負担重量が)3kg減(※2)という恩恵がありますから、そこでいただいたチャンスを次に結びつけられるかが重要なんです。
※2 負担重量とは競走馬がレースで乗せなければいけない重量(騎手と鞍などの総重量)。中央競馬では騎手免許取得後5年未満で、100勝以下の騎手は見習騎手という扱いとなり、負担重量が軽減される。30勝以下の騎手はマイナス3kgとなる。

 でも、そこはオーナーのサポートや調教師や厩務員の理解も必要で、ひとりではどうにもならないこともあります。調教には跨れるので、最初は馬のしっぽ、やがて脚、最後は一頭分まかせてもらえるように、日々信頼を積み重ねていくしかありません」

 私はレースに乗れないとき、ファンや関係者に『頑張って』と言われるのがつらかった。調教には乗っているけど、レースでの騎乗に結びつかない。人と会うのも嫌で孤立してしまいました。彼女にも、そういうときが来るかもしれません。やはり勝負の世界で、みんながライバルですから。でも、肩肘張りすぎて、孤立しないでもらいたいですね。

 先ほども言いましたが、ひとりではどうにもできない部分もあります。いいお手本となる先輩はいますから、道筋を立ててくれる頼れる人を見つけて、相談してほしいですね。勝つことも大事ですけど、他にも大切なことがいろいろありますから」


「私はそんなに長く乗ってないし、門戸を閉じてしまった身なので......」と謙遜しながらも、藤田菜七子騎手を親身に思う気持ちがひしひしと伝わってきた。中央デビューは明日5日の中山競馬場、第2レースの予定。ファンとしても、女性ジョッキーの頑張りを長い目で見守りたい。

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