【競馬】日本の牧場の行方を左右する「牝馬問題」 (3ページ目)

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 もちろん、レースのプログラムはいろいろな要素を考慮して作られたものであって、簡単に変えることはできない。スウィーニィ氏もその点はよくわかっていて、「あくまでも、生産牧場としての一方的な提案です」と付け加えたが、牝馬限定の重賞レースを増やすことで、「牝馬の活躍機会を増やし、(牝馬の)地位を向上させてほしい」という思いは強い。

 さらにスウィーニィ氏は、牝馬の価値を上げるために、馬主に対する新たなルール作りを提案した。

「例えば、JRAの馬主になった場合、『所有する牡馬と牝馬の割合を半々にしなければいけない』というルールを設けるのはどうでしょう? そうすれば、牝馬も買ってもらいやすくなるはずです。もちろんこれも、簡単には実現できないのはわかっていますよ(笑)。ただ、牝馬が売れないのは、牧場として切実な問題。だからこそ、我々はいろいろなアイデアを提案しなければいけないと思いますし、今後も牝馬の価値向上のために、何かしら考えていかなければいけないと思っています」

 本人も語るとおり、今回スウィーニィ氏が掲げたアイデアは、現状では実現が困難だ。しかしそれを承知で、彼はこれらの提案を真剣に訴えていた。日本の牧場にとって、牝馬の価値の低さは、それほど大きな問題なのである。牧場経営に大きく関わるからこそ、競馬界全体で問題意識を高める必要があるかもしれない。

 スウィーニィ氏は、牧場の経営者として「他にも提言したいことがある」という。次回は、それらについて紹介していく。

(つづく)

  ハリー・スウィーニィ

1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
『パカパカファーム』facebook>

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