【競馬】香港国際競走で見えたアジア競馬の成長ぶり (3ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 続く、香港スプリントには日本から3頭が出走。長く、日本競馬にとって大きな壁だった香港スプリントにロードカナロアが風穴を開けたとはいえ、それでも高い壁であることに変わりはない。香港勢も世代交代の過渡期にあるとはいえ、割って入れるような隙を見つけるのはなかなか難しい。しかし、そんな状況下でストレイトガール(牝5・父フジキセキ/藤原英昭厩舎)が大きな見せ場を作った。大外枠発走から、すっと中団のエアポケットに身を置くと、直線に向いて外からぐいぐいと脚を伸ばし、前に迫った。惜しくも前を行く地元のエアロヴェロシティ(せん6、P.オサリバン厩舎)とペニアフォビア(せん3、A.クルーズ厩舎)は捕らえきれなかったが、単勝55倍の低評価を覆(くつがえ)しての走りに、加えて鞍上がロードカナロアを同じ岩田康誠騎手だったこともあって、場内は大きく盛り上がった。
 
 岩田騎手は3競走目の香港マイルでもグランプリボス(牡6・父サクラバクシンオー/矢作芳人厩舎)の存在感を発揮する。

「内面の闘志を引き出すような乗り方をして欲しい」という矢作調教師の要望に応えるように、中団追走から直線では一旦前の馬群に突っ込む素振りを見せ、そこから外に持ち出してもう少しで2着というところまで迫った。さらに混戦の4着争いはワールドエース(牡5・父ディープインパクト/池江泰寿厩舎)が制し、フィエロもこれに1/4馬身差まで迫った6着となった。
 
 香港カップのアルキメデス(牡5・アルキメデス/藤原英昭厩舎)は理想的な位置取りでレースを進めたが、直線では伸びを欠き7着に終わった。もともと春のクイーンエリザベス2世カップに選出されながら、脚部不安でこれを回避して以来の実戦だったが、強さが際立った勝ち馬から3馬身半差なら上々だろう。
 
 勝つまでには至らなかったが、超一線級ではなかった日本勢が出した結果は、今後の遠征についても大きな参考になるのではないだろうか。特にトップクラスが異様なレベルの国内中長距離路線は、香港でGI を狙うという選択肢を改めて検討してもいいだろう。日本では走れば目先の入着賞金は手に入るかもしれないが、世界の関係者が目にするセリの名簿では太く掲載されるのはやはりGI勝ちが一番なのだから。

 一方で、今年も地元香港勢は強力に存在感を示した。香港ヴァーズではフリントシャーに敗れはしたものの、2~4着を香港勢が占めた。ほんの数年前までは考えられなかった事態だ。

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