【競馬】菊花賞は荒れる。過去の傾向から厳選する穴馬5頭 (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 そんな1000万下のレースを制して菊花賞に向かう馬が、今年もいる。ゴールドアクター(牡3歳/父スクリーンヒーロー)だ。春はGIIの青葉賞(5月3日/東京・芝2400m)で4着など、一歩足りなかったものの、8月には札幌で500万下→1000万下の条件戦を連勝。しかも、芝2600mという長距離戦で完勝し、いかにも菊花賞向きのタイプと言える。

 コンビを組む吉田隼人騎手も、本番に向けて手応えをつかんでいるようで、「折り合いがついてマイペースで運べた。ここで(菊花賞の出走ラインとなる)賞金を獲得できたのは大きい」と前走後にコメント。3000mへの準備は万端で、条件戦からでも一気にGIを奪取する下地は整っている。

 過去10年の菊花賞で大金星を挙げた残り2頭、ビッグウィークとソングオブウインドで共通するのは、大本命馬が本番にいたこと。ビッグウィークのときは単勝2.1倍のローズキングダム(2着)が、ソングオブウインドのときは単勝2.0倍のメイショウサムソン(4着)が、断然の人気を得ていた。そして、その逆転劇を生んだのは、ともに「展開」が大きなカギになっていた。

 ビッグウィークは、本命ローズキングダムが後方で待機する形をとる中、スローペースを2~3番手につけて、早めに抜け出して勝利した。一方、ソングオブウインドは、厳しいペースをメイショウサムソンら人気馬が前方で競う状況にあって、大きく離れた後方で息をひそめ、最後の直線で強襲し快勝した。どちらも、大本命馬からかなり離れた位置でレースを進め、タイトルを手にしたのだ。

 大本命馬ワンアンドオンリーがいる今年、展開次第で同様の波乱が起こってもおかしくない。もし、ワンアンドオンリーが前走・神戸新聞杯のように後方からレースを進めるとなると、先行馬にチャンスがある。マイペースで行くと粘り強いシャンパーニュ(牡3歳/父チチカステナンゴ)や、前述のゴールドアクターなどが、ビッグウィークの“再現候補”と言えよう。

 ただし、神戸新聞杯でワンアンドオンリーは、3コーナーから一気にスパート。先行勢を力任せに潰していく競馬を見せた。菊花賞でも同じことを行なった場合、一転、先行勢にとってはかなりタフなレースとなる。そうすると、ワンアンドオンリーが動いてもじっと我慢し、最後の直線にかける追い込み馬、ソングオブウインドのような馬が台頭する可能性がある。その候補となるのは、過去に後方一気のレースを決めている、ヴォルシェーブ(牡3歳/父ネオユニヴァース)あたりだろうか。

 ちなみに、ソングオブウインドも、ビッグウィークも、春のクラシックには縁がなく、夏場に力をつけて神戸新聞杯で3着と好走した。それに照らし合わせると、今年の神戸新聞杯3着馬、トーホウジャッカル(牡3歳/父スペシャルウィーク)も気になる存在だ。

 下馬評では、ダービー馬ワンアンドオンリーの二冠達成が濃厚とされるが、波乱の歴史が繰り返されてきた菊花賞。今年も、淀の3000mの舞台で“下剋上”が起こるのか、興味は尽きない。

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