【競馬】凱旋門賞へ、キズナ、オルフェが見せた底知れぬ「能力」 (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

悲願の凱旋門賞制覇に向けて、圧巻の走りを見せたオルフェーヴル。悲願の凱旋門賞制覇に向けて、圧巻の走りを見せたオルフェーヴル。 その「ライバル」は、キズナの勝利から1時間40分後、昨年と同じステップレース、フォワ賞に出走。一段と進化した姿を我々に見せつけた。

 日本の“第2の矢”であるオルフェーヴルは、悠然とした佇(たたず)まいでパドックを周回。レースに向かってからも、内側3番手の位置で折り合っていた。直線で楽々と抜け出してからは、鞍上のクリストフ・スミヨン騎手が手綱を抑えて後ろを振り返るほど、余裕たっぷりのレースぶりを披露。2着に3馬身差をつけて完勝した。

 1年前の同じレースでは、パドックで入れ込み、レースの道中でも何度も口を割って気の悪さを見せたが、その馬と同一とは思えないような落ち着きぶりだった。単勝1倍台に推される馬であり、「格の違い」と言ってしまえばそれまでかもしれない。だが、これまでやんちゃな走りを繰り返してきたオルフェーヴルが、真の強さのベールを脱いだらこんなにすごいのか、と思い知らされた圧巻の内容だった。

「求めていた走りが、やっと見せられた」

 池江泰寿調教師はレース後、満たされたような表情を見せて、進化したオルフェーヴルを評した。

 さながら『オルフェーヴル バージョン3.0』と言ったところか。破天荒ながら、牡馬三冠(皐月賞、ダービー、菊花賞)と有馬記念を制覇した3歳時が『バージョン1.0』で、自身の力を持て余して、波乱に満ちた4歳時が『バージョン2.0』。そして、この日見せた究極の進化型が『バージョン3.0』というわけだ。

 今年、唯一出走した大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)。大人になった走りで快勝したものの、大人になった分、オルフェーヴルの持つ爆発力が内に閉ざされてしまったのではないか、と危惧していた。しかし、あのときのオルフェーヴルはまだテスト段階の、バージョン3.0の“ベータ版”だったのだろう。それは、池江調教師の「本当はこの走りを、宝塚記念で見せたかったし、見せられた」という言葉からも裏づけられる。

 その宝塚記念(6月23日/阪神・芝2200m)は、調教中の運動誘発性肺出血で回避した。フランスに来てからも、その影響や、調教中での外傷などから、コンディションに対する不安が囁(ささや)かれていたが、池江調教師はそうした外野の声を一蹴した。

「アクシデントがあって、必ずしも順調だったとは言えませんが、(オルフェーヴルの)コンディションはずっと良かった。今日のレースも、今ひとつだった昨年の状態よりもいい具合で迎えられて、レース後の息の入りもすごく良かったです」

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