【競馬】外国人牧場長はなぜ、廃校となった小学校を買ったのか (3ページ目)

  • 河合 力●文 text&photo by Kawai Chikara

 とはいえ、はるばるアイルランドから海を渡り、それまでまったく知らなかった日本の地で牧場経営を成功させた人だけに、スタッフには厳しい面を見せることも多々ある。

 例えば、パカパカファームにおいて「できない」という言葉は許されない。通常の牧場の作業だけでなく、土木や道路の修繕などもパワーショベルを使ってスタッフで行なう。また、セリ市用の写真や動画撮影、さらにはカタログ制作についても、原稿やデザイン組みなど、印刷作業以外のほとんどの工程を牧場スタッフでまかなっている。

 日本語と英語が入り混じる労働環境を含め、パカパカファームで働く者たちには、他の牧場とは違った能力を求められることも多いだろう。それでも、牧場初期から10年近く勤めているスタッフが何人もいるのは、パカパカファームに対する愛着があるからこそではないだろうか。そしてその愛着を生む要因のひとつに、旧賀張小学校を買い取った試みに代表される、スウィーニィ氏のスタッフに対する配慮があるのかもしれない。

 生産馬だけでなく、スタッフに対してもさまざまな気遣いを見せ、パカパカファームを発展させてきたスウィーニィ氏。その彼が「牧場にとって、とても大きな転機になった」と語るのが、先に出た厚賀分場の購入である。そしてこの転機は、パカパカファームの生産方法に大きな進化をもたらすことになる。

 次回は、厚賀分場の購入によって生まれた「変化」にスポットを当てる。

(つづく)

  ハリー・スウィーニィ

1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
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