【木村和久連載】世界のファンが本当に望む、五輪のゴルフコースとは? (4ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 ゴルフのテレビ中継が始まったのはちょうどその頃で、ショーアップされたウォーターハザードのコースは大人気となります。その思想は、ピート・ダイに引き継がれ、グリーンに乗せないとすべて池ポチャという、アイランドグリーンを完成させるに至ります。

 ところで、我らが巨匠・井上誠一先生は、林間コースばかり造っていますが、そういうウォーターハザード思想に乗り遅れたのでしょうか?

 実は、そんなことはないのです。昭和37年(1962年)、井上先生は欧米のゴルフ場の視察旅行に出掛けています。そして、多大な影響を受け、ウォーターハザードとテレビ中継の重要性を痛感するのです。

 外遊後、その完成形として代表されるコースが、愛知県の南山カントリークラブ(1975年開場)です。上がり3ホールは池絡みなど戦略的なコースとなっており、しかもその3ホールにはテレビ中継用のケーブルを埋設してあると、もっぱらの噂です。

 晩年、井上先生は体を壊して、ほとんど現場に足を運ぶことができませんでした。それでも、浜野ゴルフクラブ(千葉県)、スターツ笠間ゴルフ倶楽部(茨城県)、大原・御宿ゴルフコース(千葉県)など、池絡みで美しく、非常に戦略的なコースを造っています。

 だから、もうちょっとだったのです。井上先生があと10年長生きしていたら、日本でもオリンピックのテレビ中継に耐えうる、立派なウォーターハザードのあるコースができていたかも......。

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