【ゴルフ】選手たちが語る「アン・ソンジュの強さ」 (2ページ目)

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 富士通レディースで、最終日にアン・ソンジュと同じ最終組で回って、熾烈な優勝争いを展開。最後はプレイオフの末に涙を飲んだ、菊地絵理香(26歳)はこう話す。

「絶対的に言えるのは、アン・ソンジュ選手には"焦りがない"ということ。それに尽きると思います。一緒に回った富士通レディースの最終日でも、(彼女は)ショットがすごく荒れていたんです。それでも、焦ったり、悩んだりしないで、積極的にピンを狙っていくんです。普通は、ショットの調子が悪いと、『(無理をせずに)グリーンの中央を狙おう』と考えたりするものですが......。(彼女は)そういうことを考えない選手なのかもしれません。万全な状態になくても、そうやって攻め続けられるのはすごい。

 あと、なかなかバーディーが来なくて、流れが悪い状況にあっても、あまりイライラしない。キャディーさんと話をしながら、うまくいいリズムを作っていける。そういうところが、(彼女の)強さにつながっているのかな、と思います」

 昨季2勝して一躍ブレイクした堀奈津佳(22歳)も、菊地と同じように、アン・ソンジュの卓越したメンタルコントロールに感服していた。

「(アン・ソンジュは)いつもスイングのリズムが一定で、ドライバーは飛んで曲がらないし、アイアンショットも正確です。それは、どんな状況にあっても、プレイするときの気持ちがブレていないからではないでしょうか。ラウンド中にイライラしたりして、感情が表に出るときがたまにあるのですが、ボールを打つときには、気持ちの切り替えができていますからね。(自らの)感情の起伏をうまくコントロールする力が、アンさんにはあるのだと思います」

 昨季3勝を飾って、今季もアン・ソンジュと上位争いを演じることの多い吉田弓美子(27歳)は、開口一番、「アンさんは、ゴルフの組み立てがすごくうまい」と語る。そのうえで、技術の高さを強調する。

「アンさんは、マネジメントに無駄がないんです。例えば、キャディーさんが『こっちの方向を狙ったほうがいい』とか、『グリーンのあの場所に乗せたほうがイージーパットになるよ』ってアドバイスをしたら、そのとおりに打っていく。しかも、そこに寸分の狂いもなく、ボールを乗せてきたりします。要は、それだけの技術があるんです。たとえ、少し違った場所にボールを落としたとしても、そのズレを補うだけのパッティングのうまさもあります。

 さらに今年は、精神的に強い部分が備わっている。『隙がない』っていう表現がぴったり当てはまるんじゃないでしょうか。他の選手も、それぞれに強みはあるけれども、アンさんは頭ひとつ、抜けている感じがします。ミスの範囲も、他の選手よりもかなり狭いので、一緒にプレイしているとすごく勉強になります」

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