【ゴルフ】石川遼2位。得意舞台で「成長の足跡」を示す (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Getty Images

 昨年の大会後、石川は米ツアーに本格参戦を果たした。そして、シード権取得に奔走したこの1年を、「長かった」と振り返った。これまでと異なる1年を過ごし、慣れ親しんだ太平洋クラブ御殿場コースの風景も違って見えた。

「コースは変わっていないけど、自分が変わったのか、傾斜がもっときついと思っていたところがきつくなかったり、思ったよりもバンカーとエッジの間にスペースがあったり、ということがありました」

 今年の序盤は腰痛を抱えながら、東西で異なる米国の芝質に戸惑い、またスイング改造に時間がかかり、予選落ちを繰り返した。夏場にはパッティングで苦しみ、目標の米ツアーのシード権獲得はならなかった。だが秋以降、腰痛の不安が軽減すると、米国で1年戦ってきた成果が表れ始めた。

 9月の米ツアー出場権を争う下部ツアー選手との入れ替え戦では、4戦中3戦でトップ10フィニッシュを決めて、難なく2013-2014年シーズンの出場権を獲得した。休む間もなく始まった新シーズンの開幕戦を21位タイで終えると、第2戦では自己最高位に並ぶ2位という好成績を残した。その調子を現在も維持しつつ、アメリカで培ってきた経験は、当然ながら自身の成長を促し、ゴルファーとしての視野を広げることにつながった。それが、今大会の好プレイにもつながり、石川本人も自身の成長をあらゆる場面で感じ取っていた。

 さらに今大会前には、パターをL字マレット型からピン型タイプに変更した。これまでより2インチ短いシャフトにして、スタンスを広く、そして重心を低く構えて打っていく。スタート前やラウンド後の練習グリーンでは、自作の練習器具を持ち込んで、スタンスの確認作業を繰り返していた。

「3mから5mの距離になると、どうしても軸がぶれているような気がしていたんです。いかに機械的に同じストロークを繰り返せるか、が大事ですから」

 ちょうど1カ月前、「パッティングがゴルフというスポーツの8割を占める」と語っていた石川は今年、パター変更を幾度も繰り返し、スイング以上に試行錯誤の日々を送ってきた。今回のスタイルチェンジも、得意とする太平洋クラブ御殿場コースだからこそ、挑戦し得たものだ。

「(高速グリーンで知られる)ここでは繊細なタッチが求められますけど、自分がいちばん得意としているグリーンだとも思っている。そういうグリーンで自分の新しいパッティングスタイルを試せて、初日から(自分の中では)いい形として身になっていた。今日も1番のスタートからいいタッチが決まりましたし、全体的には悪くなかった。今の自分にとって大事なのは、同じ練習を繰り返して、コース上でも練習と同じことをやれるようになること。特にパッティングはこれからだと思う」

 だからこそ、石川は刹那的な結果を求めていない。目の前の一勝に気負うこともない。今はただ、アメリカでの勝利のために、確実な一歩を刻もうとしている。

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