【男子ゴルフ】石川遼のマスターズ。ギリギリ予選突破でも確かな成長が見えた (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 例えば、スタートの緊張感から、自分のペースに乗せるための手段が、強引ではなく、自然だった。流れの中でうまく気持ちを切り替えて、心の置き所をスムーズに自分の波に乗せていった。これは、簡単に見えて、実は最も難しい。それができるようになってきたことが、何より大きい。

 さらに、ゴルフトーナメントは4日間、72ホールで争われるが、その組み立てがうまくなってきた。

 ゴルフトーナメントの4日間を、起・承・転・結で例えるならば、初日は「起」である。つまり物語の始まり、導入部分であって、決して「結」ではない。非常に簡単な話だが、実際に戦っている選手たちは、どうしても闘争本能が勝ってしまい、最初から攻めていってしまう。特にメジャー大会になると、初日から最終日のようにエンジンを全開にしてしまいがちになる。昨年までの石川がまさにそうだった。

 ところが今回は、違った。石川が言う。
「確かに14番でダブルボギーがありましたが、ティーショットを打った時点で、(必死にパーを狙おうとせず)ボギーで収められれば、と思ってのダブルボギーでした。その分、(ショックを)引きずらなかった。そういう気持ちの切換が、うまくできていたと思います」

 今年の石川には、そんなふうに気持ちの幅に余裕があった。それが、そのあとの15番、16番のバーディーにつながったのだろう。

 試合後、自身の18ホールのゲーム内容を振り返った石川。その言葉の端々からも、頭を使ったゲームマネジメントをしていた、ということが伝わってきた。実際、一直線に攻めていくのではなく、その状況に応じた攻め方、球筋、ミスを限りなく軽減させる手段、リスクマネジメントができるようになっていった。それだけ、プレイの幅の広がりと、デシジョン(決定、判断)の引き出しが、多くなってきたように思うのだ。

 今季の米ツアーでは、成績という表に見える部分では低迷しているが、石川遼というプロゴルファーの内面は、とても成長していると感じた。それが、2013年マスターズの初日だった。

 一転、2日目は誰もが味わう「予選突破」という壁が、石川の前にも大きく立ちはだかった。

「それに、負けていてはダメなんです。本当に、そこ(予選突破)をクリアしないと何も始まらない。クリアしないといけない、と思ってやっていました。それで、やはり最後のほうはそれを意識するあまり、パッティングで手が動かなくなってしまった。上りの距離のイメージがうまく出せませんでした」

 それでも石川は、2日間を終えて通算4オーバー(55位タイ)で、なんとかトップ(6アンダー)から10ストローク以内をキープ。「まずは最低限のラインをクリアできたという感じです」と、ギリギリ予選ラウンドを通過した。

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