【男子ゴルフ】松山英樹の底知れぬ粘りを発揮させた阿部監督の指令 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 彼には底知れぬ粘りがある。それが天性のものなのか、それともアマチュアゴルファーとして戦ってきて得たものなのかわからないが、彼の同級生曰く「先輩の池田勇太さんとは、違った太い性格」を持っている。それが、2日目のプレイにも表れていた。

 圧巻だったのは、13番でボギーを叩いて、通算2オーバーとしてからだ。

 この時点で、予選カットラインは5オーバーという予想が流れていただけに、このままパーで進めば予選通過は確定だった。しかしこの日のスタート前までに東北福祉大の阿部靖彦監督から「1オーバー以内だな」と言われて、3つスコアを落とした松山は焦っていた。あとふたつ(バーディーを)取らないと......。そのプレッシャーのかかった気持ちが、松山の太い性格をより太くさせた。

 16番ホールのパー3で、ピン左2m強を沈めてバーディー。1オーバーとして、さらに「あとひとつ!」とキャディに呟いた。そして、続く17番ホールでも絶妙なバーディーを奪って、イーブンパーとしたのだ。その後、18番はボギーも1オーバーでフィニッシュした。

 阿部監督が松山に「1オーバー」と言ったのは、ひとつの目標設定であり、推測される予選のカットラインだった。確かに予選通過は44位タイまでという決まりがあり、それからすると松山のプレイ中は1オーバー前後が想定されたカットラインでもあった。けれどももうひとつ、トップから10ストローク以内という決まりがある。44位のスコアがトップから10ストロークに満たない激戦の場合、残り2日間36ホールで、10ストロークは挽回できるチャンスがある、ということで決められたルールだ。

 松山はホールアウト後、「そんなことまったく知りませんでした」と笑った。その図太さには恐れ入るばかりである。

 今回のマスターズで、松山は3つの目標を立てた。その1となる、予選通過はこれでクリアした。その2は、ベストアマ。それも十分にチャンスがある。そしてその3は、彼が一番に目指している、16位以内だ。すなわち、来年のマスターズの出場権が獲得できる順位だが、今の彼なら、やってくれそうな予感がする。

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