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レアル・マドリード監督解任劇の舞台裏 シャビ・アロンソは権力がどこにあるかを見失っていた (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Akiko Tonegawa

 だが、ペレスという人物は、金儲けには長けているが、監督との関係では常に問題を抱えている。半年前、カルロ・アンチェロッティを事実上追い出した時も理由はきちんと説明されず、その経緯は奇妙で、不快なものだった。そしてわずか1年もたたないうちに、レアル・マドリードは新監督を解任した。優勝経験のある監督たちはクラブを去り、ベンチは空っぽになった。

 アロンソは「指揮を執る」つもりでマドリードに来た。当初はペレスの後ろ盾もあった。

 すぐにアロンソ流のハードなトレーニングが始まる。長時間のビデオ分析、ピッチ上での絶え間ない指示と修正、周囲の目がある場所での選手への面と向かっての叱責......。それはアンチェロッティとは、まったく異なるやり方だった。

 アロンソはレアル・マドリードの日常を変えようとした。だが、レアル・マドリードはレバークーゼンではない。スペインの首都において、パワー(権力)はベンチだけから生まれるものではない。

 パワーはさまざまな契約や世界的なイメージ、ロッカールームのリーダーたちからも生まれる。自分だけがトップにあると信じていたアロンソは、権力がどの場所にあるのかを見失っていた。

 3人のブラジル人選手は、アロンソの足元でいまにも爆発しそうな火種だった。

 なかでも最大の問題はヴィニシウス・ジュニオールだ。アロンソはヴィニシウスに、より戦術的な規律とボールを持たない局面での献身的プレーを求め、本能的なプレーには抑制を求めた。しかし、スターとあがめられ、自分のやりたいプレーを制限されることに慣れていなかったブラジル人は、これに反発した。

 アロンソ体制下で、ヴィニシウスはリーグ戦19試合中フル出場6試合。途中出場が3試合で10回も途中交代させられている。しかも、途中交代は70分前後でのものが多かった。

 アロンソとヴィニシウスの関係は急速に悪化していく。それも世界中のカメラの前で。

 10月のクラシコでは、72分に交代を命じられると、ヴィニシウスは怒りのままロッカールームへと直行した。のちに彼はペレスと面会し、この行動について謝罪したが、監督には一切、謝らなかった。ペナルティとして契約延長は凍結されたが、クラブは彼に罰金は科さなかった。これはチーム内部に向けての非常に強いメッセージとなった。監督より選手を支持する、というものだ。

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