検索

【欧州サッカー】やせっぽちの少年が名選手となり名将へ グアルディオラがいなければフットボールの進化は遅れていた (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【芸術的なパスでチャンスを演出】

 サンプドリアに限らず、イタリアのクラブはカウンターを得意にしている。ほんの小さなパスミスが大きな綻びになりかねない。「決勝の大舞台でもクールに振る舞ったグアルディオラこそが殊勲者」という評価も、決して少なくはなかった。

 ありとあらゆる状況を脳裏にインプットしている。二手三手先を読みながらボールをコントロールし、パスを配する。最適のポジションをとる。文字にすると無味乾燥な所作を、グアルディオラは鮮やかにやってのけていた。

 キックの精度はラ・マシアから培ってきた。長短緩急は自由自在。FWの足もとに、スペースに寸分の狂いもないパスが届けられる。クライフに率いられた当時のバルセロナは「ドリームチーム」と呼ばれ、アタッカーを軸に語られるケースが多いとはいえ、すべてをコントロールしていたのはグアルディオラだったのだろう。

 ちなみに、彼をトップチームに引き上げたのは、ほかならぬクライフ監督である。稀代の名将は、各方面で脆弱なフィジカルが批判されていたやせっぽちの少年のパスセンスに注目した。もし、クライフ監督がバルセロナに着任していなかったら......。

 ハードワーカーではない。スピードスターでもなければ、ボール奪取能力に秀でていたわけでもない。それでもグアルディオラが人々の記憶に深く刻まれているのは、芸術的なパスで数多くのチャンスを演出してきたからだ。

「我々の攻撃は、前線にパスをダイレクトにつなぐより、グアルディオラを経由したほうがスピーディー、かつ精度が高い」

 フットボールに一家言を持つバルセロナのソシオ(会員)でさえも、中盤の将軍には一目置いていたという。

 フィジカルとはまったく無縁のグアルディオラにドーピング疑惑が生じたのは、2001年のことだった。血中から興奮剤が検出され、4カ月の出場停止処分が下される。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る