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【プレミアリーグ】ソン・フンミンを超える日本人誕生はいつの日か「8年連続ふた桁ゴール」は偉大すぎる高い壁 (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【「英語すら話せない子ども」】

 また、23ゴールを記録した2021-22シーズンは、アジア人初の得点王にも輝いている。タイスコアだったモハメド・サラー(リバプール)はPKの5点が含まれている。クリスティアーノ・ロナウド(当時マンチェスター・U)は3つのPKを加えて18ゴールだった。一方、ソンはPKを蹴らずして23ゴールを残した。

 スパーズにおける通算成績は127ゴール・77アシスト。ゴール関与数は204にも及び、過去10年のプレミアリーグではサラーの271(184ゴール・87アシスト)、ケインの233(189ゴール・44アシスト)に次ぐ3位という、すさまじい好記録である。

 前述したようにソンは究極のレジェンドであり、プロ中のプロだ。韓国では彼を目指す若者も少なくないし、日本でもロールモデルにすべき人材のひとりである。

 ソンの言葉を借りるなら、「スパーズにやってきた当時は、英語すら話せない子どもだった」。だが、たゆまぬ努力の結果、キャプテンマークを託されるまでに成長した。

 試合前後の記者会見は通訳を使わずにこなす話術を身につけ、なおかつロッカールームをまとめる。誰にでもできる仕事ではない。周囲から信頼されていなければ、監督はキャプテンに指名しない。人として、選手として、筋が通っているからこそのリーダーだ。

 こうした人づき合いはコミュニケーション能力が成せる業(わざ)であり、日本では長友佑都や吉田麻也が同タイプだろう。彼らもまた、人の懐(ふところ)に飛び込む術(すべ)を心得ている。

 日々の勉強を怠らず、研究にも励み、苦手だった英語を克服して、ソンは今日の地位を築いた。身長183cm・体重78kgという標準サイズでもプレミアリーグの強度に耐えられたのは、万全の準備と強い気持ちによるものだ。

 日本人選手のテクニックは近年、著しく向上した。戦術理解度も高くなり、来年に迫った北中米ワールドカップでもダークホースのひとつに数えられている。

 だが、ソンのようにプレミアリーグで8年連続ふた桁ゴールを奪えるようなストライカーは、まだ現われていない。イングランド屈指の名門でキャプテンを務める男も、まだ存在しない。

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