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バルセロナ、怒涛の来日 指揮官は急転直下のドタバタを明かし、選手たちは無言でスタジアムをあとに (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【試合ができたこと自体を評価】

 試合の結果は1-3でバルサが勝利している。もっとも、その結果自体に大きな意味はない。コンディション的には、本来の半分にも及ばないはずである。

「すばらしいスタジアムで試合をすることができました。神戸はとてもいいチームで、プレッシングも機能的だったし、インテンシティも高く、我々が求めるようなフィロソフィを持ったチームだと思いました。結果的にいいテストになりました」

 フリックは、試合ができたこと自体を高く評価していた。監督会見は、とても和やかなムードだった。

 一方、ミックスゾーンをバルサの選手は素通りしている。日本側の関係者は、「選手に声をかけて止めてください」と声を上げていたが、ひとりも止まっていない。たとえばロベルト・レバンドフスキはスマートフォンをいじりながら通路を歩き、止められても「バスの時間があるから」と外を指で差し、素気なく過ぎ去った。ペドリ、ラミン・ヤマルなども少しも止まるそぶりを見せていない。

 しかし、これは彼らの態度が悪いわけではない。現在、ラ・リーガの取材でコメントを出すのは、試合で得点者になったなどのヒーロー的な選手だけ。日本のように選手全員が通路を歩いて、声をかけられたら答える仕組みではないのだ。

 極めつけはテレビのインタビューだった。ダニ・オルモが一度はカメラの前に立ったが、「バスが出るぞ」という声がかかると、質問に答えずに立ち去っている。

「一問だけでもいいから!」

 関係者の必死の懇願にも、彼は首を振っている。非情にも映ったが、彼らにはミックスゾーンでそうやって取材のために止まる習慣がもうないのだ。

 さらに言えば、各選手は試合後、疲労困憊だっただろう。なぜなら、前後半に分かれて試合に出場した選手たちは、ハーフタイムと試合終了後、それぞれフィジカルコーチにゴールからゴールまで何往復も全力疾走させられていた。ベテランのレバンドフスキは45分間プレーした後のラントレで、さすがに腰に手をついていた。まるで真夏の高校サッカー部の合宿のようだったが、それもフィジカルメニューのひとつだ。

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