アレッサンドロ・ネスタこそCBの完成形 ファーディナンドも絶賛「学ぶべきプレーが山ほど」 (3ページ目)
【個の技術でうならせるDF】
20年ほど前の彼らは、前線にフィリッポ・インザーギ、シェフチェンコ、リバウド、中盤にもルイ・コスタ、アンドレア・ピルロ、クラレンス・セードルフなどの実力者を擁したものの、パオロ・マルディーニを除くDF陣は凡庸だった。ネスタは喉から手が出るほどほしい人材だ。
極上のDFによって最終ラインが安定したミランは、PK戦にまでもつれ込んだユベントスとのチャンピオンズリーグ(CL)決勝を制し、ヨーロッパのテッペンに立つ。
その後も2004-05、2006-07シーズンに決勝へ進出。後者では「イスタンブールの奇跡」のリベンジも果たした。ヨーロッパチャンピオンとして出場したクラブワールドカップでは、アルゼンチンのボカ・ジュニオルスを下して世界も制覇している。
だが、2000年代中期に発覚したカルチョポリ──いわゆる八百長事件によって、イタリアサッカー界全体が競争力を失う。ネスタが所属するミランも例外ではなかった。
悪意に満ちた好奇心と、猜疑(さいぎ)心にあふれた視線が突き刺さる。好プレーを見せても「裏に何かあるに決まっているではないか」と、メディアもサポーターも端(はな)から信じようとしない。
カルチョは坂道を転げ落ちていった。名将ジョゼ・モウリーニョ率いるインテルが2009-10シーズンのCLを制したあと、セリエAのクラブは一度もヨーロッパ最強の座に就いていない。カルチョポリの代償は大きかった。
ただ、ネスタを絶賛する関係者は今も少なくない。同じ時代にしのぎを削ったリオ・ファーディナンド(元イングランド代表DF/マンチェスター・ユナイテッド)も、カルチョが誇る名手を絶賛するひとりだ。
「1対1を迎える前のアプローチ、ポジショニング、読み・予測、フェイク、誘導、身体の入れ方、腕の使い方など、現代フットボールのディフェンダーはネスタから学ぶべきプレーが山ほどある。
最後に身体を張りさえすればいいんだろって考え方は、あらためたほうがいい。個の技術でうならせる現役選手は、リバプールのフィルジル・ファン・ダイク、アーセナルのウィリアン・サリバ......数少ないね」
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