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バルサは気がつけばヤマル頼みになっていた チャンピオンズリーグ準決勝敗退の要因 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【最も活躍したのはヤマルだったが...】

 合計スコア6-5。バルサがこの準決勝で、初めてインテルに対してリードを奪った瞬間である。だが大激戦に終止符が打たれたという感じは不思議にも湧かなかった。

 5分と表示されたロスタイムに入ってもバルサは攻めた。その2分後にはヤマルがインテルゴールにポスト直撃弾を見舞っている。試合巧者ならばボールを回す。バルサにはそれができる技術がある。それを怠ったツケが1分後(後半48分)に訪れた。

 右サイドをダンフリースに割られると、その折り返しをフランチェスコ・アチェルビ(イタリア代表)に押し込まれ、試合を合計スコア6-6とされてしまう。

 平均年齢でインテルを大幅に下回るバルサ。若さというより、気質的な緩さを露呈させたというべきだろう。延長戦を、しぶとさ比べでは負けないインテルが制したのは当然の帰結だったのかもしれない。

 合計スコアを7-6とする決勝弾が生まれたのは、延長前半9分だった。

 右サイドでFWマルクス・テュラム(フランス代表)が、バルサDFロナルド・アラウホ(ウルグアイ代表)に競り勝ち、ペナルティエリア内へ侵入。メフディ・タレミ(イラン代表)にボールを預ける。その落としたボールに反応したのがMFダビデ・フラッテージ(イタリア代表)だった。はやる気持ちを抑えるように、ワンフェイントを入れながらサイドネットに蹴り込んだ。

 ヤマルは延長後半9分と11分にGKゾマーを泳がせる際どいシュートを放っている。採点すれば10点満点中9をつけたくなる活躍だった。両軍で最も活躍した選手である。だが、結果論を承知で言えば、ヤマルの活躍とバルサの敗戦は関連性があるように見えた。

 バルサのサッカーは、気がつけばヤマル頼みになっていた。ヤマルのスゴさが、チームとしてのバラエティさ、攻撃のバランスを、逆に失わせる結果を招いていた。攻撃のベクトルは3方向(左、右、中央)均等ではなく、大きく右に偏った。ヤマルの登場回数が多すぎる弊害を思わずにいられなかった。

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