久保建英はローテーション起用のなかでもベストパフォーマンスが必要 スペイン人番記者のレアル・ソシエダ後半戦の展望
現地発! スペイン人記者「久保建英コラム」
今回はスペイン紙『ムンド・デポルティボ』でレアル・ソシエダの番記者を務めるウナイ・バルベルデ・リコン氏に、補強のなかったレアル・ソシエダの今冬の動きについてと、目前に迫ったヨーロッパリーグのミッティラン戦の展望を書いてもらった。久保建英の活躍は期待できるだろうか。
【補強なしは信じがたい】
ヨーロッパリーグ(EL)、国王杯、リーガの3大会すべてで生き残っているレアル・ソシエダは今、すべてを懸けてシーズンの最も激しい時期に突入しようとしている。ここに至るまでにはさまざまなことが起こったが、あきらめずに野心的に挑戦し続けている。
ローテーション起用のなか活躍が求められる久保建英 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る 彼らはまず今後2週間で、ELのラウンド16進出を懸けたプレーオフ2試合に臨む。負けたらすべてが終わる"決勝戦"のような戦いだ。同時に、6季連続で欧州カップ戦出場を達成するために、国内リーグでも順位を上げていく必要がある。
ラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)は勝ち進んだ場合、約3日おきに1試合という過密日程を最大で19試合連続でこなすことになる。イマノル・アルグアシル監督は最近、「苦しむことなく、それに耐えられる選手など存在しない。彼らの労力をうまくコントロールし、全員を起用していかなければならない」と語っていた。
予想される過密日程、深刻な得点力不足問題、および主力選手の退団など、チームが苦しむ要因を改善するために、冬の移籍市場を利用する余地はあった。にもかかわらず、ラ・レアルがこの冬、チームを強化しなかったのはとても信じがたいことだ。さらに3人をレンタルに出して、選手層がさらに薄くなっている。
マルティン・スビメンディの後釜と期待されたウルコ・ゴンサレス・デ・サラテは、すでにエスパニョールでスタメンに名を連ねている。クラブ史上最も高額な移籍金で加入したウマル・サディクは再起を図るためにバレンシアを選び、ジョン・マグナセライアは出場の機会を求めて2部コルドバに向かった。これによってチームには今、ミケル・オヤルサバルとオーリ・オスカールソンのふたりしかセンターフォワードが残っていない。
昨夏の移籍市場で、クラブの将来を賭けてオスカールソンを2000万ユーロ(約32億円)、ルカ・スチッチを1000万(約16億円)、ハビ・ロペスを700万ユーロ(約11億2000万円)、セルヒオ・ゴメスを900万ユーロ(約14億4000万円)で獲得した。さらにナイフ・アゲルドを200万ユーロ(約3億2000万円)でレンタルしたことで、必要な投資はすでに行なったと考えている。
さらに、この数カ月間で何人もの下部組織出身の選手と契約延長を済ませている。実績あるスター選手との契約でもない限り、イマノルは今いる選手たちに信頼を寄せ、クラブは新たな補強を求める必要はないと考えたのだ。
冬の移籍市場最終日、ジョキン・アペリバイ会長は「われわれは何も考えていない」と言い、イマノルも「私の考えは明確だ。補強を望んでいないし、求めるつもりもない」と、選手獲得の必要性を強く主張し続ける報道陣に飽き飽きした様子で答えていた。
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著者プロフィール
高橋智行 (たかはし・ともゆき)
茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、リーガ・エスパニョーラを中心としたメディアの仕事に携わっている。