久保建英が「守備の番人」との空中戦に勝利 先制点の起点となるプレーに地元紙も驚いた (2ページ目)
【不得意なことにも向き合える】
そんな相手にもかかわらず、久保は競り合いで易々と勝っていた。『アス』の記者が「驚くべきことに」と書いているように、油断を誘ったのもあったのかもしれない。しかし、久保は「空中戦だけは負けない」と誇る守備の番人に勝っているのだ。
一事が万事、この点だけでも、久保がコンプリートな選手に近づいている証左だろう。
ヘディングはボールの軌道を見極める目が大事で、相手との駆け引き、ポジション争い、ジャンプのタイミングなど、単なる高さだけではない要素が入る。つまり、工夫によって上達が可能と言える。
その点で言えば、久保より背の低いメッシも、実はヘディングが不得手ではない。タイミングをつかみ、スペースに飛び込めば、あとはボールとコンタクトするだけ。意外にヘディングでの得点も少なくないのだ。
かつて、バルセロナの右サイドバックとして活躍した元ブラジル代表ダニエウ・アウベスが面白い証言をしていたことがあった。
「ドリブルやボール技術だけなら、たとえばスペイン代表のヘスス・ナバスはメッシと同じくらいのレベルにあると思う。しかしメッシのほうがずっと"成熟している"。彼はひとつのプレーに満足しない。ヘディングだって、フリーキックだって、なんだって上達する。最初はうまくなくても、完璧を目指すというのか、そのエネルギーは周りを巻き込むほどで、世界最高の選手になったのは必然なんだ」
カットインからのシュートで観客を沸かせる選手は、いくらでもいる。しかし、そのうまさに甘んじず、自分の不得意と言われるところにも向き合える。そうした貪欲な選手は限られている。
その意味で、久保はメッシの系譜を継いでいる。久保は体の小ささや弱さを揶揄されることもあった。足だって、目立つほどには速くない。しかし、自分の武器であるスキルとビジョンのレベルを高める一方、体幹を鍛え、腕の使い方を覚え、目を養い、相手の勢いを逆手に取る動きを身につけた。足の運びも改善され、傑出した技術にステップが調和。さらにヘディングも工夫し、高さまでも克服した。
2 / 3