エムバペになくてレバンドフスキにあるもの クラシコを「大差」にした「ストライカー」の有無 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【ストライカーならではの駆け引き】

 ではなぜ、バルサのロベルト・レバンドフスキは決勝点となる2ゴールを決められたのか。

 レバンドフスキは生粋のストライカーだが、すでに36歳になる。「全盛期はすぎた」と言われて久しい。実際、昔ほど腰の強さはないし、俊敏性は確実に落ちた。それでも、勝負どころでゴールを重ねることができている。

 その理由は、ストライカーという特殊なポジションで積み重ねた「駆け引きの老練さ」にある。

 事実、レアル・マドリード戦の先制点は見事だった。センターバックが一気にオフサイドトラップをかけてきたが、動揺して下がることはなく、冷静に状況を見極めていた。なぜなら、左サイドバックのフェルラン・メンディがまんまと居残っていたからである。

「優れたストライカーは、無邪気にセンターバックとだけ駆け引きしない。必ずサイドバックと駆け引きし、相手の一瞬の隙をつく」は、ひとつの定石である。駆け引きのなかで、ライン全体に乱れを生じさせ、それを見逃さない。レベルが上がれば上がるほど、目の前のセンターバックを出し抜いて一気に裏を抜け出すのは難しいのだ。

 もうひとつ、極めたストライカーは、急がない。

 レバンドフスキの2点目のシーン。味方の速い攻撃から、勢いをつけて突っ込んでもよかったが、むしろスローダウンしてエリア内へ侵入している。そして自分の前のスペースを開け、そこにクロスを呼び込み、確実にヘディングで叩き込んだ。

 圧倒的なパワーも、スピードも要らない。間合い。それこそが、年季の入ったストライカーの点の取り方と言える。

 翻って、エムバペはいわゆるストライカーではない。

 アタッカーとストライカーは似ているが違う。アタッカーは攻撃的ポジションの総称で、ストライカーは特定のポジションを指す。得点を取る、という役割に特化したストライカーは特別なポジションだ。

 レアル・マドリードの2トップとなったエムバペも、あるいはヴィニシウス・ジュニオールも、得点力が高いアタッカーではある。カウンターの先駆けとして、相手に脅威を与えられる。事実、チャンピオンズリーグではドルトムントを"葬った"。だが、ふたりはストライカーではないのだ。

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