バルセロナで絶好調のラフィーニャが拓いた新境地 「第二トップ下」とは?
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第17回 ラフィーニャ
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。今回は、バルセロナで今季新境地を拓いたラフィーニャに注目。ウイングでありながらトップ下のプレーもする、新しいプレースタイルを深掘りします。
【今季は"第二トップ下"】
ラ・リーガ9試合で5ゴール4アシスト、8月のリーガ月間MVPにも選出されたラフィーニャが絶好調だ。
バルセロナで今季好調なプレーを見せているラフィーニャ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 昨季までは右ウイングでプレーしていたが、ハンジ・フリック新監督の下では左ウイングにスイッチ。ただ、ウイングというより第二トップ下とも言うべきプレースタイルで新境地を拓いている。
今季のバルセロナの特徴として、中央のオーバーロード(過負荷)がある。センターフォワード(CF)のロベルト・レバンドフスキ、トップ下のダニ・オルモだけでなく、左ウイングのラフィーニャも中央へ移動。さらに2ボランチのひとり(主にペドリ)も加わる。
4人も集結してしまうと互いにスペースを潰し合ってしまうのではないかと思うかもしれないが、そこは伝統の高い技術を駆使したパスワークがある。素早いパスワークでプレスを外すと、相手ディフェンスラインがフリーズする。最終ラインの前で瞬間的にせよフリーになる選手がいるので、ラインを上げることもできず固まってしまうのだ。
そのフリーズしたラインの裏を攻略、または相手が中央に寄ってきたら空いたサイドへ展開する。右はラミン・ヤマルが張っていて、さらに右サイドバック(SB)のジュール・クンデも加勢。左は左SBが幅をとっているが、サイドアタックは右が強力だ。
中央への人数投入はフリック監督の新機軸ではあるが、バルセロナの伝統とも合致している。リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケツの4人によるパスワーク、中央突破は黄金時代の象徴だった。
温故知新の新戦術では、トップ下でプレーできる選手がふたりないし3人必要なのだが、第二トップ下としてのラフィーニャの存在が決定的だった。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。