ユーロ史上最年長、ペペが41歳になっても最前線で戦える理由「神様に導かれたんじゃないか...」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【貧しかった子ども時代】

 ペペはそう言って、自然な笑みを洩らしていた。もっともその笑顔は、陽気というよりは、戦い抜く覚悟をした者だけが身につけられる類のものだった。

「ブラジルのマセイオという町で生まれ育ったんだけど、僕が住んでいた地区はお世辞にも柄がいいとは言えなくて。低所得者層の住宅地というか、かなり貧しかった。でも、父からは"すべては自分の意志と努力で決まる。しっかりとした道を歩みなさい"と言われた。子どもの頃は一緒に遊んでいた友人が、薬物にはまって廃人同様になる姿は痛々しかった。でも、人生は自分で選ばないといけない。自分にはサッカーがあった......ボールを蹴ることは幸せだし、サッカー選手であることが自分の道だと思っている」

 貧しさから抜け出すハングリーさ。それはスポーツの世界では"定型"だろう。しかしペペはその精神を忘れず、サッカーに感謝しながらピッチに立ち続けた。それは彼の異能だ。

「神様に導かれたんじゃないか、と思える時がある」

 ペペは言う。

「自然に体が動いて、そのプレーをしてしまうことがある。もしかすると、周りの人にはわからない感覚かもしれない。しかし、選手はそういうとき、"自分はそのプレーをするため、ここに存在しているんだ"と思う。そうすると、力が湧きあがってくるんだよ」

 当時からペペには、「ピッチで勝ち残る。さもなければ次はない」という切迫したメンタリティがあった。だからこそ、どんなディフェンスにも適応できた。リカルド・カルバーリョ、ファビオ・カンナバーロ、セルヒオ・ラモスなど世界最高級のセンターバックとコンビを組み、鉄壁を誇っている。たとえばカンナバーロとは守りを固める速さに注意し、カルバーリョとは逆に先手を打つ守りを心掛けたという。

 ペペは、そうして今日まで勝ち続けてきた。監督の体現者として、ジョゼ・モウリーニョが率いたレアル・マドリード時代は、かなり好戦的なタイプに映るほど"求められる選手"になりきった。妥協がないのだ。

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