セリエAの復権を象徴するアタランタのEL制覇 攻撃陣3枚のポジションが勝負を分けた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【3-4-3的だったアタランタ】

 両軍の力が互角なら、1点を奪われた側はここから押し返すものだ。実力で上回るチームなら一方的に攻め続ける。しかし、レバークーゼンはそれができなかった。後手に回り、手をこまねいた。大袈裟に言えば、それはタイムアップの笛が鳴るまで続いた。

 両者の違いは、この先制点のシーンに象徴されていた。アタランタがサイドを有効に使って横から崩そうとしていたのに対し、レバークーゼンの攻撃は正面に偏った。初めて外からの折り返しでチャンスを作ったのは、ルックマンに追加点を許し、0-2で迎えた後半14分という遅さだった。アミン・アドリ(モロッコ代表)の折り返しから、ジェレミー・フリンポン(オランダ代表)がシュートを放ったシーンだが、これもサイド攻撃を意図的に企てたのではなく、たまたまボールが左に流れただけという感じだった。

 3-4-2-1(アタランタ)対3-4-1-2(レバークーゼン)。違いはそれぞれのアタッカー3枚の関係に起因する。絶対的な幅が広かったアタランタは、3-4-3的であった。それに対し、レバークーゼンは縦長で、サイドアタッカーがウイングバック各1人しかいなかった。相手ボール時には5-4-1(5-2-3)で、構えにくくブロックを築きにくい状態に陥ったため、ボールを失うとかなりの頻度でピンチを招いたのだった。

 先制点をマークしたルックマンは、先述の通り前半26分には中央から右足でミドルシュートを決め2点目をゲット。後半30分にも同じ態勢から今度はボールを左に持ち代えミドルシュートを決め、ハットトリックを達成した。キャプテン格で本来、中盤の要となるマルテン・デ・ローン(オランダ代表)がケガで欠場しなければ、先発が回ってこなかったかもしれない選手である。ラッキーボーイがEL決勝史上初となる偉業を打ち立てたところに、アトランタに運を感じた。

 想起したのは1996-97のチャンピオンズリーグ(CL)決勝、ユベントス対ドルトムントだ。下馬評で上回ったユベントスは0-2でリードを許すも、アレッサンドロ・デル・ピエロのゴールで2-1とし、追い上げムードを加速させていた。同点は時間の問題かと思われたその時だった。交代で入ったばかりのラース・リッケンが、ファーストタッチで1-3と突き放す駄目押しゴールを決めた。オットマー・ヒッツフェルト監督の采配が光ったというより、ドルトムントに運を感じた瞬間だった。 

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