歴史的ブンデス制覇を成し遂げたレバークーゼンのシャビ・アロンソの監督論 「楽しみながら進みたい」 (3ページ目)
【レバークーゼン残留を決断】
「彼はまるでメトロノームだね。チームにリズムを与え、プレースピードを調節できる。何より徒党を組まないから周りに信頼され、集団を動かす器量があるんだ」
気難しいジョゼ・モウリーニョでさえ、アロンソを手放しでそう褒め称え、自分の分身のように扱っていた。監督の思い描く世界を、自らのプレーで体現できたからだ。
――あなたは、ラファエル・ベニテス、モウリーニョ、カルロ・アンチェロッティ、そしてジョゼップ・グアルディオラの麾下で華々しいタイトルを獲っていますが、一番影響を受けた監督は?
ラ・レアルBを率いて1年目のアロンソに、そう訊ねたことがある。
「影響は全員だよ。誰かひとりではないかな。結局のところ、監督は本人のパーソナリティだよ。どのように感じ、どのようなサッカーをしたいのか。監督はそれが自分のなかにないといけない。私は子どもの頃から、『もっとサッカーを理解するには?』って、いつも自分に問うてきた。90分プレーして勝ち負けで終わり、なんてあり得ない。どこで何をすればもっと向上できるのか、そのためには何が必要なのか、ずっと考えてきたんだ」
アロンソは少年時代から監督としての素養を積んできた。監督歴は短いが、過ごした日々は濃密である。おかげで、誰よりも自分だけの世界を展開できるのだ。
「ヨハン・クライフが言っていたことだけど、『一番美しいのは、選手としてプレーすること。二番目に美しいのは監督』。私もそう思う。今は違う形だけど、選手を通じてサッカーを楽しんでいるよ。目標は設定していない。現役の時もそうだったけど、目の前のことを懸命にやってきた。日々、野心的に挑むつもりだけど、楽しみながら進みたい。結果は後からついてくるものさ」
アロンソはそう語っていが、まさにその積み重ねで、今の快進撃がある。レアル・マドリード、リバプール、バイエルンなど古巣から熱烈なラブコールを受けたが、来シーズンもレバークーゼンを率いる決断をした。彼がそう決めたということは、それだけの必然があるのだろう。
新たな伝説の開帳だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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