歴史的ブンデス制覇を成し遂げたレバークーゼンのシャビ・アロンソの監督論 「楽しみながら進みたい」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【パスの練習ばかりしていた】

――君はレアル・ソシエダ、バルサでリーグ制覇を経験した名MF、ペリコ・アロンソを父に持つ"サラブレッド"。お父さんの影響はあった?

 そう尋ねた時、アロンソが答えた言葉は、今振り返ると重厚感がある。

「正直に言うけど、いつボールを蹴り始めたか、覚えていない。親父がプロ選手だったんで、自然にボールを蹴っていたんだろう。プロになるのも、特別な意識はなかった。当然のことだと考えていた。周囲からは『おまえにはフットボーラーの血が流れている』とおだてられることもあったけど、気にしていなかった。サッカーに向き合わないと明日はなく、ラクな世界ではないと知っていたから」

 プロサッカーという荒野で生き抜く術と覚悟を、ほとんど本来的に携えていて、それを練り上げてきたのだ。

 アロンソは18歳でラ・レアルとプロ契約するまで、育成専門のクラブ(トップチームがなく、他クラブと業務提携し、人材を供給する)のアンティグオコに所属し、勝負以上に技を磨いていた。

「シャビ(アロンソ)はシュートにあまり興味がなくて、パスばかり練習していたね。それもロングパスを蹴ろうと、取り憑かれたように必死だった」

 アンティグオコの関係者はそう明かしていた。

 アロンソは10代前半まで筋力が弱く、ロングキックは飛距離が出なかった。しかし、頑なにボールを通そうとした。結果、球速が弱く、パスは何度もカットされ、コーチにはやめるように諭されたが......。

「あそこにボールを蹴ることができれば、必ずチャンスになる。なんで、それをしないの?」

 彼はそう言って譲らなかった。グランド管理者が呆れるほど遅くまで居残り、黙々と壁にボールをぶつけた。その強情さで、アロンソは美しい弾道のキックを身につけたのだ。

「シャビには彼だけの世界がある」

 アロンソは、そう言われてきた。その世界とは、サッカースタイルに通じるだろう。スペイン、ドイツ、イングランドとプレーを重ねるなかで、それを極めてきた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る