三笘薫とアンス・ファティは共存できるか バルサの至宝が「開眼」するには? (2ページ目)
【トップ下に定着できるか】
三笘はあらゆるコントロール&キックがゴールに結びついていて、トップスピードでも精度が落ちない。ひとりで完全に止められるディフェンダーはおそらくいないだろう。左から遊撃兵のように守備陣を脅かすことで、勝機は生まれる。直近のニューカッスル戦ではギャップで受けてドリブルを始めると、周りのディフェンスをくぎづけにし、エヴァン・ファーガソンのゴールをアシストした。
つまり、三笘のアシストを受けられたら、ファティもゴールを量産できるということだ。
もともとファティは勘のよさも含めて、プレースピードに優れたアタッカーである。三笘のリズムにもついていけるだろう。ワンツーやフリックなど瞬間のひらめきで、お互い触発し合えるはずだ。
懸案はポジションにあるだろう。
バルサではユース時代、ファティはクラブ伝統の4-3-3で左アタッカーを担当していた。トップに入ることもあったが、サイドからのゴールパターンを得意とした。これはバルサFWでは特別なことではなく、同じ下部組織のボージャン・クルキッチ、ムニル・エル・ハダディも前線だったらこれというポジションはないに等しかった。トップチームでもダビド・ビジャは左FWだった。
しかし、ファティはトップチームで、ケガやライバルの存在もあったにせよ、居場所を見つけられていない。左アタッカーには基本的に崩し役になるウィンガーか、ガビのように戦える選手が重く用いられた。トップではロベルト・レヴァンドフスキのように、ポストプレーやサイドに流れたり中盤に落ちたりする総合的なストライカーが上位だった。
その点、ブライトンは基本が4-2-3-1で、トップ下のポジションがある。ファティはそこで勝負できるか。
ファティはラ・リーガでの経験もまだ少なく、プレーテンポが異なるプレミアに適応するのは簡単ではない。言葉の壁もあるし、スペインで実績のある選手でも、当初はプレー強度の高さには面食らう。縦に速く、高さを用いる相手も多く、パワー勝負に適応する必要もあるだろう。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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